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まだまだ余談

  「ふぅ……」  部活の終了時間を知らせるチャイムが耳に響く。  胡座で座ったまま見上げる空には、なにも感じない。まだまだ暑い気温は朝も夜も関係ないみたいだ。だから夕方の今の時間帯も当然、暑い。  9月いっぱいまでは暑さも続くらしいから秋という季節がちゃんとやってくるのかも危うい、とか。  高等部の屋上は使えない。  鍵がかかってて、かといって漫画や小説みたいに針金などを使って開けるというものも出来ない現実だが、中等部の屋上は出入りが許されていたりする。  どっちかっていうとこっちの方が自殺防止で鍵かけた方がいいんじゃねぇの? 「あ、木下先輩!」  夏休みが終わってもう数日。  友樹との関係も変わらず、良好。  あと、急に溢れてきた涙の止め方は、抱き締めること――頭のメモ帳に残しといた友樹の有力情報だ。 「……おー、後輩ちゃーん」  と、ここでだが、俺は今、中等部の屋上に勝手に居座っている。  良ければ中等部生のホモも見たいとは思っているが、そうそうに見付かるわけがなかった。どうせなら寮の方がいいかもしれないな。  あそこなら簡単に見つかる。てか、見れる。 「なんでこっちに居んスかぁ?」  そんなところで可愛がってる後輩の窪田が突然、屋上にやって来ては俺に話しかけてきた。  直そうとしない窪田の喋り方にいつもいつも『バカみたいな口調で俺に話しかけるなー』と俺は注意を入れる。  ちゃんとしてれば撫で回す勢いで倒してやるからさ。 「こうじゃなきゃ襲われちゃうんスよ!」 「お、いいねー。盗撮盗撮ぅ」  けど、窪田にも事情があるみたいだからな。  強気をかますために意味のないじゃらじゃらなアクセサリーに第三ボタンまで派手に外して着こなす制服のシャツ。  あれ、つーか右耳に三つ、左耳に一つとピアスまで付けてるじゃねぇか。増えたなぁ。  とはいえ、ここは中等部の屋上で。  仮に窪田の知り合いがやって来て、俺の目の前でこいつが襲われたら――こんな展開になったら俺は止めずにこの場から出て行くからな。  窪田も頑張れ、って思いながら出て行くから。  お前の威嚇はその程度で、可愛さ溢れるオーラは隠しきれてないんだよ。 「いやぁ、もう完全燃焼だ。どうしよう」  ごろ、と寝転がった俺は眩しくもなんともない空の雲を見ながら呟く。  自慰行為以外のあとに来る賢者タイムとはこういったものなんだろうか。  面白いものを見たにしても、俺のくだらない妄想のあとにしても、友樹との良好状態が続いてるにしても……んー、笑いが出そうだ。  最近の俺はよく笑ってるなぁ、って本当に思う。 「どうしたんスか?先輩らしくないっス」 「俺らしいってなんだよ」 「ゲスとか下衆とか、ゲスい?――いだだっ!」  先輩相手に失礼な事を言った罰で俺は窪田の膝小僧を攻撃。そしてすぐに膝裏をぶっ叩いて曲げる簡単な倒し方。 「俺はゲスくない」  膝から崩れるように座り込む窪田を見て、くあ、と欠伸をしながら否定。  ほんと、ゲスなんて、失礼な。これからやろうとしている、もしくは過去にやってきたものを窪田に話したとして、お前はそれを聞いたら次はなんて呼ぶんだ?  ゲスの他に、どんな思いで俺呼ぶ?  つーか友樹だって……って、友樹となにかを天秤にかけると絶対に友樹の方に傾くな。  俺が好きで、それでいろいろ耐えてヤってくれてるみたいだから。俺のプラン――ハメ撮り――に、付き合っちゃう奴だからなぁ。  友樹を贔屓するのも、当たり前になってきた日常。  攻撃したせいか窪田はまだ立ちもせず、そのまま制服のシャツのポケットから飴を取り出して舐めていた。あれは俺がマジックで出したレモン味だ……まだ持っていたのか。  そこで、ふっ、と上体を起こして向かい合う形で窪田の名前を呼んだ。 「窪田、お前今週末暇だろ?」 「え、今週末っスか?んー、暇っスね。本屋でも行こうかと思ってたぐらいっスわ」  予想通り。  窪田の予定なんて漫画小説の新刊を買いに行くか部屋でBLゲームをしているかのどちらかだからな。  新刊がそれぞれ出るのは再来週、ゲームについてはこの間まで『持ってるゲームを全部、裏攻略も含めてやり尽くしちゃったんですよね』とか言ってたから。  だから聞かずに強引に誘えばよかったんだろうが、ここは常識的にいこう。 「じゃあ遊ぶか」 「えっ、遊んでくれるんスか!?」 「口調は直せよ」  そう言うと、頭ふっ飛ぶんじゃねぇの?ってぐらいの勢いで首を縦に動かし、頷いた窪田。  マジわんこ属性。 「時間はまた連絡するけど、待ち合わせは高等部の正門前な」 「うっす!どこ行きます?」  ウキウキしている窪田はさっそく計画したいらしい。けどお前はちょっと可哀想な位置に立ってもらうから、先に謝っとく。――ごめんな。  埋め合わせはちゃんとしてやるから!  今回は俺の好き勝手にやらせてくれ。  そう思いながら俺は立ち上がり、制服についたかもしれない砂などを叩き落としながら『それはまた今度だ』と言ってドアに向かう。  あ、そうだ。たまには第三者の意見も聞いてみるか。 「そーだ、くぼたぁ」  呼んだ俺に、呼ばれた窪田。振り返りながら首を傾げた可愛い後輩ちゃんは、はい?と言って返事をする。  聞くだけで、どんな事を言われようがやめる気はさらさらないんだけどさ。 「元カレのもとへ犯されに行くシチュエーション、どうよ」  笑顔で提案したものだ。  でも、まだ15歳には、どうもダメなようで、 「……外道にも、ほどが……」  苦笑いで返されたものだった。 「先輩?それはないっスわ。寝取りってやつっスかぁ?」  そんな窪田に俺は一言『んー、そんな感じ?』と返してドアノブをひねり、開ける。  中等部から高等部まで、徒歩10分未満。――実はこのあと、テッちゃんにも会いに行かなきゃいけないから多忙なんだ。  でもあれはすぐに終わるから、あとはビデオカメラの微調整だけしてようかな。  あ、それから愁哉さんに連絡か。  あー、もうホント次のが楽しみだー。  

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