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余り道談
――405号室前。
スリッパを挟んで完全に閉めないようにしているドアにホッと一息。
どんなメルヘンチックなのかチャイムベルがハートの形で見てるこっち側までほわほわするものだった。窪田がいる部屋のベルもこんなんだったっけ?
とかいろいろ思いつつ、そのベルを押してビデオカメラを構える。
録画も始まってるから問題ないだろう、と考えていたらすごい勢いでドアが開いて、驚きながらも反射的に避けた俺は本当に自分を褒めたいと思ったな!
「うおっと……!」
「あーあ、トモちゃんが逃げようとするからー」
「……歩っ?」
勢いよく開けたのは、友樹だった。……なんかベルトが外れかけてるけど、これはフライングだろうか。
ジーッと撮る友樹の下半身。
当たり前だが勃起などしていなくて、でも息は荒いから必死の抵抗でもしていたんだろうな。それでもヘラついてる愁哉さんは、やっぱりさすがだと思ったね。
「なんで、」
戸惑う友樹の目。
「木下くんも結構いい趣味してるよなぁ?トモちゃんを掘っていいって。でもカメラを撮らせろって。驚いたし、笑ったよ」
「……」
そこでやっと友樹は俺が持つカメラの存在に気付いたみたいで、画面越しの友樹と目が合う。
そんな俺は小型画面に映る友樹に微笑みかけながらズカズカと部屋に入っていった。もちろん、逃げようとしていたらしい友樹も連れて、だ。
しっかりドアが閉まる音も耳に入れて。
「いやぁ、トモくんごめんねぇ?この日のために、というか、今日は元カレさんとヤってもらおうというか?」
持っていた荷物をベッドサイドに置いて、部屋を撮り回しながら謝る。謝った理由はいろいろあるぞ。
嘘吐いたことや内緒にしていたこと、それにヤる相手にしてもタブー過ぎること。
でもやっぱ俺的には昔の男っていうワードもいいと思うんだ。前の男、とでも言えばいいのかわからないが。
元カレ×不良にしても、チャラ男×不良にしても、ヤリチンビッチ×不良にしても……複数が混ざっていいし、なにより受け同士だぜ?
どうなんだって、話だ。もちろん受け×受けなわけで、愁哉さん×友樹なんだが、突っ込めるモノはある。――二人とも、な。
イケるって。
「さっそくですが、ヤっちゃいます?」
つい楽しみのあまりにっこりと笑ってしまった俺と、嬉しそうにテンションをマックスに上げる愁哉さんは『いえーい!』と叫んでいた。
それでいて友樹は――。友樹は?
「……」
友樹は、知らねぇよ。見てないから。知らないフリ、でもない。
だって友樹は俯いてるだけだから、真面目にどんなテンションなのかわからねぇーの。
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