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かわいいピロートーク(物理編)

  「なんつーかさ、トモちゃん」 「ふぅ、ん……っ」 「ははっ、気持ち良かったわ」  泣いてる友樹にもちろん気付いてるはずの愁哉さんは相変わらず良い笑顔で伝えて卑猥な音とともにやっと繋がっていたモノを抜き、友樹の横に寝転んだ。  よし、友樹と離れたな。持っていたカメラをベッドサイドに置き、使った双頭ディルドもあとで洗うとして、置いておこう。  なにも言わない俺と、ピロートークのつもりで話しかける愁哉さん。返せてるのかわからない友樹は、今どんな気持ちなのか……最初から、おかしかったんだ。  だいたい嫌な顔して誰かとヤる友樹なのに、元カレという“愁哉さん”にたいしてはそれほど抵抗を見せていなかったし。箍が外れたように、やだやだと喘ぐのも、今日は本当に最後だけ……というより中出しされる瞬間にしか言ってない。  俺が見たかった嫌がる姿もなく、イっちゃうとか。  あ、つまらない感情はここから来ていたのか。 「俺等ってどっちも相性いいんだなぁって思わねぇ?」 「はぁ……はぁっ」 「なんだトモちゃん、まだ落ち着かないの?」 「……っ」  そして『あははっ』と笑う愁哉さんは友樹に抱き着いて可愛い可愛いの連呼。  戻ってきた体力ほど、この人のウザさは増すばかりだな。てか、たぶん、中出しなんてクソみたいな事をしたから、余計に『クソ』とか『ウザい』とか思うんだろうけど。 「カッコいいトモちゃんも可愛いトモちゃんも出来るしタチネコも気にせずイケるみたいだし?」 「……」 「……」  無言で片付ける、俺。 「今のトモちゃんってば付き合ってる人とかいなそうだし!」 「……」 「……」  無言で荷物をまとめる、俺。 「セフレはなんかいるっぽいけどー……例えば木下くんとか?」 「……」 「……」  無言で忘れ物がないか辺りを見回す、俺。 「でもそんなセフレとか全部切っちゃってさぁ、俺達――よりでも戻しちゃうー?」 「……」 「んははっ!」  それでいて笑いまくる愁哉さんは、お茶ら気もいいところだ。  なに言ってんの、この人。そして友樹のその反応もなんなんだよ。黙ってるって……え、バカ?  は? 俺が? 友樹が? ビッチが?  俺の自業自得? 人選ミス?  てか、あれ、この気持ち、なんだっけ。なにイラついてんの俺。  中出しされたから?  中出しした相手が相手だから?  あーあ、俺ってば実は自分勝手だったのかもなぁ。中沢とか松村とか、他の奴等とか、前から俺をそう思ってたりして。  今さら気付く性格の一部に苦笑いが漏れる。  それに呆れながら、二人に近付く。 「はぁ、どうよトモちゃん、この話」 「……」  これはこれで交渉だよなー。  俺もこんな感じでよくみんなと成立させてたもんだ。エサのやり方は違い過ぎるけど。  セックスしませんか?というエサに、もう一度付き合いませんか?というエサ。  友樹だったらどっちがいいのか、俺にはさっぱりだけど。 「あの、元カレさん」  突然、話しかけた俺に愁哉さんは機嫌が良いみたいで甘ったるい声を出しながら『また元カレ呼び?なぁにー?』と返してきた。  なに、じゃない。この人も受ける側なら気持ちわからねぇの?  こういうのって、ツラいのは受けだって。 「あの、本当に、マジですみません」 「え、なにが?」 「いや、お金的な、」 「あぁ、ここの?いいよ、俺が出すから」  ちょっと纏まらない俺の言葉に愁哉さんは早とちりして返事を返す。  いやいやいや、最後まで言わせろよ。あー……まあ、出してくれるならそれはそれで俺に損はないからいいんだけど、そうじゃないんですよー。 「金的な意味ではなく……んー、気絶的な?」 「へ――?」  そう呟いて半分の申し訳なさと半分のイラつきで動いてしまった俺の気持ち。――愁哉さんの目元を手で塞ぎながら、鳩尾を殴り、短い呻き声とともに気絶させた。  いや、これ何度か父親に教えられてたものなんだけどさ。俺自身やっと身についたというか……あまりやりたくなかった行為、というか? 「あ……歩?」 「……なにさっきの反応」  泣きは泣きでもそんなに泣いてなかったみたいで、微かな目の赤さを気にしつつ、俺は友樹の腕を強引に引っ張って風呂場に向かった。  

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