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次の日曜日の朝8時、疲れ切ってた拓海は熟睡していた。茉莉も拓海の腕の中でスヤスヤと眠っている。
だが突然、インターフォンが何度も何度も鳴らされた。
(あれ? 宅急便とかくるんやっけ?)
疲労からか上手いこと目が覚めてくれない。
するとドアの向こう側から厳しい声が聞こえてきた。
「石蕗さん! 今日はエントランスの掃除の日ですよ! 今日は石蕗さんが当番の日ですよ!」
老年の男性が少々立腹しているような物言いでドンドンとドアを叩く。
「あ! しまった!」
拓海はどうにか身体を起こすが立ち眩 んでしまいベッドから落ちてしまう。その騒ぎで茉莉もグズグズと泣いて起きてしまう。
「うわああ! あああぁ!」
「あ…まーちゃん……」
茉莉を抱きかかえてどうにかなだめる。
「ったく、これだから今時の若い人は…石蕗さーん?」
ドンドンとドアを叩かれる音は止まない。頭の中がパニックになった拓海はじんわりと涙がで始めた。
「卜部 さん、石蕗さん引っ越してきたばかりで当番なんか無理だよ。俺が代わりにやるから」
「なんだ智裕、今日もお前か」
ドアの叩く音はその声で止んだ。止めてくれたのは智裕だった。
「ババアに行けって言われたからしゃあねぇんだよ。それに石蕗さんとこ赤ちゃんいるから、こんなクッソ寒いのに外出せないって。あと扉ドンドンしない!」
「うるせぇ! 最近の若ぇ奴は皆こんなんだからなぁ」
「はいはいはい、後から聞きますから、さっさと倉庫行って準備しましょ、ね?」
老年の男性を諌めながら智裕は石蕗家から離れていったと思って拓海はホッと胸をなでおろした時だった。
「石蕗さん! 近所の人には俺がうまいこと言っとくからゆっくり休んでくださいね!」
そしてバタバタと慌てたような足音が遠ざかっていく。いつの間にか茉莉も泣き止んでいた。反対に拓海は涙が一筋流れた。そしてパニックで荒くなっていた呼吸は徐々に落ち着いていた。
だが心臓の鼓動は速くて顔は熱い。
(…こんな、迷惑かけてしもぉたのに…俺、何考えてん…)
一度ふるふると頭を振って冷静になろうとしたがだめだった。そして拓海は自分の気持ちに白旗を振った。
「俺…あの人のこと……好きなんや…」
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