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第6話

好みの男が、自分の書いた小説を好きだと言ってくれる。小説家にとって、生み出した作品は自分の分身のようなものだから。 それを好きだと愛してくれるなら、まるで生みの親の自分自身が受け入れられているように感じられるのも、無理からぬことではないだろうか。 惹かれないわけがなかった。 もう二度とここには来るなと告げた日。 秋青は何かを悟ったように、けれどもその言葉を受け入れられず、激昂して。若さだろうか、自分の持つ熱やエネルギーをすべてぶつけるかのように、慶一を酷く抱いた。 何度も何度も、ただ欲望のままに奥深くを突き上げられてえぐられて、離さないと全身で訴えているかのように、骨が軋むような気がするほど強く強く、抱きしめられて。このままこの身が壊れてしまうのなら本望だと、思った自分に嫌気がさした。 歳ばかり食って、一向に学ばない。いく度もこうやってまた、不毛な恋に足を踏み入れる。 慶一を腕に抱きかかえたまま、泣き疲れた子どものようにすうすうと寝息を立てる秋青を見て、落ちたのはこいつか、はたまた自分かと、そんな想いを巡らせて。 それからは自分でも呆れるくらいなし崩しに、秋青から好意を向けられるがまま受け入れて、慶一が“未成年”を言い訳にできなくなる歳を秋青が迎えても、2人の体の関係は続いた。 男同士のセックスなんて当然に知らなかった秋青だが、元来素直で努力家な性格だから、慶一を喜ばせるようになるのにそう時間はかからなかった。 手酷く抱かれた初めてのときとは大違いで、丁寧に慈しむように抱かれるたび、秋青を男も抱けるようにしてしまった後悔の念が込み上げた。 あれは、体の関係を持つようになった頃だろうか。それとも、付き合い始めた頃だろうか。秋青がぽつりぽつりと、慶一に語ったことがある。

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