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32.ふたりの誕生日プレゼント?
今日は8月30日だ。この日は何の日か知ってる? オレ的にはめちゃ有名な日なんだぜ。だってオレの誕生日なんだもん。
せっかくの誕生日だけど中学までは全然嬉しい日じゃなかったんだ。どちらかと言うと、祝うよりも怒られる日だったからな。夏休み最終日の前日、宿題がまだ終わってなくて必死こいてやってた日だ。そして、終わる気配が全くなかった日でもあったんだ。
さすがに高校生になってからは心を入れ替えたよ。宿題とか課題は前倒しでやって、あとはのんびりってカンジにね。
高校に入ってからは特に誕生日を祝ってもらうってのは無かったけど、それでも毎年ケーキだけはお母さんが焼いてくれる。だからきっと今夜も、晩ごはんの後にケーキが出てくるんじゃないかな。
余談だけど亮介の誕生日は9月3日だ。ふっふっふっ、実はオレの方が年上なんだぜ。たった数日だけど。
「これ……、誕生日プレゼント」
なるべく早く来てってお願いされてやって来た、今は朝の9時半だ。亮介の部屋で渡されたのはオレへの誕生日プレゼントで、レモンイエローのざっくりとしたセーターだった。薄手だけど長袖だから着るのはもう少し涼しくなってからになるのかな。
「亮介サンキュッ! でも似合うかな? オレこんな色のは着たことないや」
「智の髪茶色っぽいから似合うと思うよ」
着てみたら自分でもビックリするくらい似合ってた。すげーわ。亮介ってセンス良いんだなぁ。
「でも何時買ったん? 夏期講習とかあったし、なかなか買い物行くヒマ無かったじゃん」
「姉貴のヤケ買いツアーのお供をさせられたとき。今回は珍しく服も見に行ってさ。姉貴、ケンカ中なのに彼氏の服買ってたんだぜ。で、そんときオレも智の服選んでたの」
「ああ、あんときかぁ……」
そうだった。そういえばそんなことがあった。亮太がひとりでウチに遊びに来た日だ。
あの日亮太はオレの部屋で飽きるまでゲームをやり散らかして、お母さんの作ったごはんを全部平らげて、追加で作ったごはんもペロリと食べつくして、そして帰ってったんだ。好き放題やってやがると思ったけど、お母さんは大満足だったみたいだ、あの食べっぷりに。
「なあ亮介、亮介は誕生日プレゼント何が良い? オレひとりじゃ選べないと思うからさ、亮介にリクエストされたものにしたい」
実はオレもいろいろ考えてたんだ、亮介のプレゼントのことを。でも、いまいち決まらなくてさ。だから亮介の欲しいものを聞くのが一番かなって思ってた。
「一番欲しいモノあるんだけどさ、それをリクエストしてもいい?」
「いいよ。あっでも、あんまし高いものはムリ」
「それって、今日でもいい?」
「いいよ。……って、だから今日は早く来いって言ってたのかぁ」
なるべく早く来てってお願いされてたのがちょっと不思議だったんだよ。きっと亮介の欲しいものが売ってるお店は限られてて、遠くにあるんだろうな。
「んじゃあさ、もう買いに出かける?」
それなら善は急げだ。亮介の欲しいものをちゃちゃっと買って、その後はふたりでマッタリしたいなぁなんて思いつつそう聞いてみた。
でも違ってた。ここに早く来て欲しい理由ってのはさ、オレの予想とは全然違ってたんだ。って言うか、亮介はやっぱり亮介で、エロエロ大王だった。
「トーモ♪ オレ、誕生日プレゼントに智が欲しい」
「へっ? 何言ってくれてんの?」
「だーかーらぁ、オレへの誕生日プレゼントに、智とじっくりゆっくりエッチしたい。智もオレも気持ち良くなれるから良いこと尽くめだし、次にふたりっきりでじっくりエッチできるのって当分無いだろうし、今のうちに智をいっぱい摂取しときたいじゃん」
じゃん……、じゃねぇだろ!
亮介はオレに抱きついてそう言うけど、まだ午前中だよ、昼前だよ、10時半だよ。こんな時間からサカってどうすんのよ。大丈夫かオレ? 今日は生きて家に帰れるんか? オレ今夜は家で誕生日ケーキを食べたいんだぜ。
「おまえさぁ、何でそんなにエロいんだよ……」
「えー、前にも言ったじゃん。オレ、智相手だとどこまでもエロくなれる自信あるって」
ニッコリ笑って言い切った。言い切ったよ! そうだよ、前もそう言ってたよ。だからきっとブレて無いんだよ。でもオレ……、逃げていい?
「ダメ?」
「っ……ダメ……じゃない」
嗚呼もうっ! 普段はオレのこと甘やかすクセして、こんな時だけはオレに甘えるんだぜ。そんな顔されたらダメって言えないじゃんか。別にエッチしたくないワケじゃないし……したいし……、ただこんな朝っぱらからってのがちょっとなぁって……。
「よーし、じゃあまずお風呂行こっか。今日もいっぱい気持ち良くしてあげるね」
そう言って亮介はオレを風呂場へ連れていった。
これってさぁ……、亮介と初エッチのときみたいじゃないか? やっぱオレ、今夜は干からびてるような気がする。
別にイヤじゃないけどな。
う、嬉しいけどな。
……恥ずかしいから認めたくないけど。
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