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Ⅵ 嘘つきの誠意①
頭が痛い。
額には白いシートがペタン。
「ブラック、冷えピタンシート取り替えに来たよ」
ペタン
シートが剥がされて、新しい冷えピタンシートが額に貼られた。
ペタペタ
「これで良し!」
「君……もうちょっと優しく」
「強引に何度も迫ってきたブラックに言われたくない!」
「同意のもとじゃないか。呪いを解くためには、私の精液を全部出して……ワフワフ!」
「言うなァーッ」
口の中いっぱいにクッキーを詰め込まれてしまった。
今の私はクッキーを所望していない。
私はなにか、君の機嫌を損ねる発言をしたかい?
「熱が下がるまで絶対安静!」
「私の股ぐらの熱を冷ますには、君のオスマンコの協力が必要だよー!……ワフワフ!」
「そういうコトも熱が下がるまでは禁止!キスも禁止~!」
「君の協力なしでは、雄の巨根は天を仰いで下がらないよー!……ワフワフ!」
「禁止ったら禁止~!!」
クッキーで口の中が溢れ返っている。
これも幸せの味なのかな。
雨の中、朝まで君を抱いて。
私は熱を出してしまい、だけど君は風邪を引かなくて良かったよ。
お風呂に入れて、一緒に浸かった湯船の中で君を抱いたのも、君は覚えてないだろうけど。
「ねぇ、ピンク」
「なに?ブラック」
「君は私を家族だと言ったけど」
「うん」
「私達の関係はなにかな?」
「恋人……だけど?」
「それって、家族かい?」
君は矛盾しているよ。
恋人は家族じゃない。
「私達の関係、もう一つ進める必要がありそうだね」
「それって……それって~~!!」
みるみる耳まで真っ赤になる君が愛しいよ。
かじりかけのクッキーを君の口に放り込んだ。
キス禁止されたからね。
幸せの味の共有だよ。
手鏡の中に映る私は、昨日の私ではない。
馬鹿な男だよ。
君に翻弄されて、幸せの熱に浮かされている。
私の右眼に蒼い痣はない。
瞳の紅い色も消えた。
けれど……
眼の色が元に戻ったかというと、そうではない。
私の左眼は黒
右眼は紫
呪いはまだ、私の中に残っている。
この呪いは歳をとるスピードに相殺されるか……
ひどく緩やかに侵攻する時間の逆行なのか……
それとも、明日にはこの体が消滅する定めなのか……
誰にも分からない。
それでもね。
私は君に寄り添うよ。
私の未来は、君のもので
君の未来は、私のものだから
キラキラ眩しい陽光が輝く朝。
鳥の声が風に乗って、吹き流れた。
天高く
願いは、届いただろうか?
『貴方』のいる空へ
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