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第8話

「いただきますっ!」  私は手を合わせ、食事前の挨拶をした。  そして、ハンバーグナポリタンを食べ始める。 「っ! おいひぃっ」  ふわふわなハンバーグ。  その中にナポリタンがある。  それは、栄彦さんのオリジナルだった。  私が知っているのは、ハンバーグの付け合せにナポリタンだったから、驚いた。  でも、これはこれで美味しくて。  私は、感動しながら食べる。 「あ、私の切ったピーマンもある♪」 「そう。上手に切れたよね、さすが恩恵くんだ」 「っ、ま、まあ……! 私、やってましたから」  栄彦さんに褒められると嬉しい。  とても、嬉しくて。  嬉しくて。  顔が熱い。  多分、顔、赤くなっている。 「栄彦さん、私を褒めても、何も出てきませんよ」 「良いんだよ、恩恵くん。君がそこにいるだけで」 「っ」 「親っていうのはね、そういうもんらしいよ。俺のおふくろがよく言ってた」 「そうなんですか……。私は、言われたことありません」 「俺もなかったよ。この前、初めて聞いたんだ」 「?」 「おふくろに子育てのことを聞いてね。俺は、確かに三年前までは妻と子供はいた。けど、家族がいた頃から、仕事ばっかのしがない中年さ」 「しがない?」 「んー、だめなオッサンってこと」 「だめじゃないです。栄彦さんは、優しくて、良い人で、その、わ、私を家に置いて、くれているので、その……」  多分。  いや、きっと。  私の初恋の相手だ。  恋愛漫画や小説で読んだことある。  恋をすると、どうなるか。  それに、当てはまるんだ。 「その、えっと、しがないってことはない大人です!」  私がそう言うと、栄彦さんは笑って、私の頭を撫でる。 「ありがと。恩恵」 「っ」  胸の奥が、ドキッと、キュッとした。  ああ、やっぱり、私は恋をした。  あなたに。  これは、伝えてはいけないことだと思う。  伝えず、あなたの傍に。 「どういたしまして」  私は目を伏せて言った。  声は、少し震えてしまったけど。

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