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第32話

あんな風に待っていてと言われて寝れるはずもなく、冷たいミルクティーを飲みながらアシュリーの帰りを待つことにした。 夜が楽しみだな、などと甘く低い声で囁かれたのが耳にまとわりついて離れない。 アシュリーが仕事に入ってからはずっとうわの空で、掃除をしていても食器を片付けていても洗濯を取り込んでいてもいつまでも彼の声を無意識に反芻していた。 彼がもしもう一度僕の大事な部分に触れたら、、と考えるだけで真っ赤になり、しかし考えるのをやめられなくて、下半身が疼いている。そんな自分に心底失望していた。 アシュリーは僕の身体のことを考えながら自制できるのに、自分はなんでこうなんだろうと思う。自分勝手で情けない。 本当に何も手につかないので、仕方なくソファーの上に寝転がる。天井を見ながらじっとしていると、しばらくしてアシュリーの帰ってくる音がした。 「ただいま。」 「お、おかえりなさい。」 その美しい顔を直視できなくて、思わずそこから目をそらしてしまう。次に目に入る白衣から覗く鎖骨も、その長くて美しい指も、何が視界に入ってもそれがひどく官能的なものに思えた。 どこを見てもダメなのでうつむいて床を見ていると、アシュリーが近寄ってきてぎゅっと抱きしめられる。 「顔真っ赤だよ。ずっとその様子で待ってたの?」 うん、ともともとうつむいた顔をもっとうつむかせてうなずいた。 甘く囁く優しくて低い声音は、明らかにいつもと何か違う色を帯びている。その声を聞くだけで自分はどうにかなってしまいそうで。 ただそれは彼にも言えることのようだった。甘い吐息とともに、彼がじっと僕の目を見据える。 「ごめん、もう無理だ。」 いきなりふわっと身体が宙に浮いたかと思うと、そのままお姫様抱っこの形でアシュリーの部屋まで連れていかれた。 顔がこんなに近くにあることに、抱かれている間は恥ずかしすぎて、彼の首にしがみついたままぎゅっと目を閉じていた。 アシュリーの部屋のベッドに身体を降ろされると、大好きな香りに包まれた。しかしその香りさえも今は安心できるものではなく気分をおかしくするのに十分だった。 彼が1番小さな明かりを灯すと、その部屋はまるであの処理の時とは別空間の、大人のための空間に変わっていく。 薄暗く、でもお互いの身体はしっかり見える程度の明るさ。アシュリーの顔も紅潮している気がする。ほのかな暖色の明かりのせいだろうか。それとも…。 「あの時みたいに、全部脱げるね?」 優しいキスを僕の顔のいたるところに落としながら、彼は僕にそう告げた。その声も、あの時とは違う。 この声で囁かれたら、絶対に従うしかない、と感じた。 恥ずかしくて真っ赤になりながら、このあかりの下で顔の赤さはわかりませんように、と願いながら、少しずつ上から衣服を脱いでいく。 全てを脱ぎ終わり1番大事なところを無防備に晒すと、彼はその一点を熱を帯びた瞳で見つめてきた。 「恥ずかしいよ」 「だめ、ちゃんと見せて。」 普段の優しい彼からは考えられないほど、羞恥心を煽ってくる。隠そうとした手は押さえつけられ、自分のそそり勃つそこを彼の目がなぞっていく。

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