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第43話

言われた通りに準備を済ませた後再びベッドに戻る。なんとなく恥ずかしくてもぞもぞと掛け布団を被ろうとすると、ダメだよ、と言われ剥がされた。 「じゃあ、後ろを向いて。」 何故か手袋をしている彼に、四つん這いのような格好にさせられる。性器まで普段見られているのに、それでもやはり恥ずかしい。 緩めるように表面に触れられたあと、クリームと一緒にゆっくりそこに指が入ると、痛くはないが謎の違和感に包まれて気持ち悪い。 「痛くない?」 耳元で聞いてくる声は、本当に心配そうだがやはりいつものものとは違ってとても低く甘い。 「変な感じ。痛くはない。」 途切れ途切れになんとか答える。じゃあ続けるよ、と彼は優しく丁寧にそこをほぐしていく。 そしてある瞬間、 「うぁっ 」 自分でも何が起きたかよくわからず、ぴりっと電気が走ったような刺激に襲われて、反射的に声が出た。 その甘い響きが自分のものだと理解するのにも時間がかかり、それでやっとそれが気持ち良い、と言う感覚なのがわかった。 「ごめん、我慢して。」 アシュリーはそこを容赦なく擦り、出させてと懇願しても、我慢してと後ろから抱きしめるだけでそのまま手を止めなかった。反射的に出る声はどんどん高くなり、おもわず自分で口を覆うほど。 やがてそこの感覚がなくなってきた頃、やっと彼の手が止まる。 「もうそろそろ大丈夫かな?…痛くない?」 「…何も感じない、、、。」 見ると彼の手袋は中央の指3本分が光っており、こんなにたくさん入っていたことと、濡れているのが自分のせいであることを思うとますます恥ずかしい。 快楽もあったが、それ以上にしんどいなと思った。相手が彼でなかったら、絶対にやりたくない。負担が大きいと聞いてはいたが、予想以上だ。 世の中の人が大体経験することとはまるで思えない。そして、やはり自分がこの苦痛を背負って良かったと思った。 そしてなによりも不思議なのは、早く彼と繋がりたいと思う自分だ。こんなに苦しくても、その先を求めるのは彼だからだろうか。まだ一枚も服を脱いでいない彼も、その一部は服の上からでもわかるほどに熱くなっていた。 「早く、欲しい。ちゃんと繋がりたい。」 「…っ、あんまり煽らないで。加減できない。」 彼の目は理性と本能の間で揺らいでいて、それを吐き出すように一度僕に激しい口づけをした。舌が激しく絡み合い、やがて離れると銀色の糸を引く。彼は自分のそれをゴムのようなもので覆い始めた。 「挿れるよ。」 真剣な声で言われ、背筋がゾクっとする。と同時に感覚のなくなっていたそこに一気にぴったりと彼が入り、熱くなる。これが、繋がるということか、と思った。 快楽と言うよりは、心が満たされていく感覚に近い。彼と身体的な距離が1番近くなり、一つになったことが実感できた。 なにより、後ろから背中にぴったりと抱きつく彼の体温が心地よい。 もう一度出させてとせがむと、今度は僕の前を触り、達させてくれた。あとを追うように中が熱くなり、彼の力も脱けていった。 「どうだった?」 自分の身体と一緒に、力が入らずほぼ彼に全体重を身体を預けている僕を洗いながら、さっきとは違う優しい声で聞かれた。 濡れた髪に、きらめくピアスが美しい。いつも綺麗だけど、水が滴っている彼もやはり美しい。 「…幸せだった。」 そう答えたら、再び抱きしめられ、軽く口付けられた。肌と肌で触れ合うと、その温もりが心地いい。 「俺もだよ。頑張ってくれてありがとう。」 その夜は、シーツでぐちゃぐちゃになった彼のベッドの代わりに、僕の部屋のベッドで寝ることになった。 「テオの匂いだ。」 ベッドの上で彼は、こちらに身体を傾けながら僕の顔を愛しくてたまらないと言うふうに見つめている。 「そんなのしないよ。」 アシュリーのベッドはアシュリーの匂いがするけど。 「自分にはきっとわからないんだよ。テオの匂いは甘いよ。」 甘い口づけとともに頭を撫でられる。情事の後のそれは、いつもよりずっと優しく感じられて、さっきまであんな風に触れ合っていたのに、心は今の方がずっと近い気がした。 「アシュリーがいつもより近い気がする。」 「いつも1番近くにいるよ。でも確かに、俺もそんな気がする。」 2人で笑い合うと、両手を重ね合わせてまたキスをした。 その甘い余韻をいつまでも味わっていたくて寝るのがもったいない。それはアシュリーも同じようで、それからしばらく2人で最近の話をした。 主に仕事のことだけど、普段はあまりしないので新鮮だ。 やがてどちらからともなく疲れのせいか眠りに落ちて、次の日の朝は2人で寝坊して午後から家を出た。

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