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第5話 秘密のひじき
前にリンリーに刺されて怪我をしてからは、ブルーと一緒にパトロールをしていた。
二人だとデートのようで楽しく、その日も手を繋いで「昼飯の後に運動するぞ」「うん、今日は僕が上に乗る」と笑い合いながら本部に戻って来た。
洗面所で手を洗い、また手を繋いで食堂へ向かう。何かを煮たようないい匂いがして、小さくお腹を鳴らしながら食堂のドアを開けた。
中では、各々食事を摂る隊員達がいた。
皆んなに挨拶をしてからトレイを持つ。ご飯、味噌汁、豚の生姜焼きを乗せてブルーを待っていると、僕のトレイにブルーがひじきの煮物の器を乗せた。
「おまえ、ちゃんとこれも食え」
「え~…、嫌いだから取らなかったのに。ブルーが食べてよ」
「好き嫌いすんな。自分のノルマは果たせよ」
ブルーは基本僕に優しいけど、時々厳しいことを言う。でもそんな所も好きだから、僕は口を尖らせながらも渋々頷いた。
ピンクの隣に僕、ブルーと並んで座り、手を合わせて食べ始める。
静かに食べていたけど、ピンクが一心不乱にひじきを食べてるのが気になって、思わず凝視する。
「…ピンク、そんなにひじきが好きなの?なんだったら僕の分も…」
「レッド!自分の分は自分で食え!」
「う…、わかってるよ…」
はぁ…と溜息を吐いてひじきの器を持った僕の腕が掴まれる。
驚いて隣を見ると、ピンクが頬を赤く染めて僕を見ていた。
「ど、どうしたの?」
「それ…ひじき、いらないなら頂戴…」
「え…でも、僕の分だし…」
「お願いっ。嫌いなんだろ?ひじき」
「そうだけど…」
「じゃあ俺が食べてあげるっ」
「あっ…」
ものすごい速さで僕からひじきの器を奪うと、ピンクはまた一心不乱にひじきをかき込み始めた。
僕だけでなくブルーも一緒になって、ポカンとピンクを見る。
周りで様子を見ていた隊員達からも、クスクスと笑う声が聞こえた。
「確かにこのひじき美味いけどさぁ、好き過ぎじゃね?ピンク」
「ホントに。いつも上品に食ってんのに、別人みたいにがっついてんのな」
向かい側に座るパープルとイエローが、苦笑しながらピンクを見ている。
「マルーン、今日のひじきってどこ産?評判いいけど」
「これ?誰かにもらったのか知らないけど、司令塔が持って来たんだよね」
アクアマリンの問いに答えたマルーンの言葉を聞いて、僕はピシリと固まった。
「どうした、レッド?」
「し、司令塔が持って来たって…。それって…!」
僕は知っている。
だって、前に司令塔のマントをめくって中にあるモノを見たから。
そしてもちろん、ピンクも知ってる筈だ。
そうか…。だからピンクはこんなにもひじきを…。
「…ピンク。その、司令塔が持って来たひじきって……」
「え?あ、うん。ブラックの陰毛だよ。まるでアフロみたいにもじゃもじゃと生えてたの、ひじきが。さすがブラックだよね!すごいよね!ひじきが生えてるなんて!昨夜、剃毛プレイしたから、いっぱいひじきが取れたんだ。どうするのかなぁ、って思ってたら、マルーンに渡してくれて、こんな美味しい煮物になって出てきて、俺、凄く嬉しいんだ!」
一瞬、シーン…と静まり返った直後、全員が悲鳴を上げて食堂から出て行った。
残された僕とブルーは、顔を見合わせて苦笑する。
「やっべー…、危うく食っちまうところだったよ。悪ぃな、レッド。無理矢理食わそうとしてさ」
「いや、まさか司令塔のひじきが出てくるとは思わないし…。僕、やっぱりひじきは二度と食べない」
「そうだな…。俺も暫くは食わねぇ」
ムシャムシャと響く音に二人して顔を隣に向ける。
いつの間にか他の人の器も持ってきて、ピンクがひたすらにひじきを食べ続けていた。
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