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ミッション・ちんリウム
「ピンク、準備はいい?」
「うん!」
琥珀色の瞳と、葡萄色の瞳が、煌めく。
「じゃあ……」
「いざ……」
ミッション・ちんリウム!
いつもは必ず三回ノックする扉を、音を立てずに動かした。
薄っぺらい身体がようやく滑り込めるくらいの隙間を開ける。
廊下で固唾を飲んで見守るグリーンに目配せし、後ろ手にそっと扉を閉めた。
☆ミッション1:ブラックの部屋に忍び込もう!
足音を忍ばせ、忍者のようにヒタヒタと司令室を走り抜ける。
ブラックの私室に繋がる扉に耳を当て、中の気配に意識を集中させた。
物音ひとつ聞こえない。
ドアノブに手をかけると、いとも簡単に動いた。
プライベートな空間にも関わらず施錠されていないのは、ほかでもないピンクのためだ。
まだ幼かった頃、闇に怯えてひとりでいられない夜、決まってブラックのマントに包まれて眠った。
抱きしめてくれる強い腕が、もうひとりじゃないと教えてくれた。
直接肌に感じる温もりが、生きていていいんだと伝えてくれた。
ブラックはいつだって、どんなピンクだって受け入れてくれる。
だからこうしてひとりで眠れるようになった今も、ピンクを思い、扉に鍵をかけずにいるのだ。
そんなブラックの優しさを利用するようで胸がチクリと痛んだが、ミッション遂行のためにはしょうがない。
そう言い聞かせて、ピンクは足を進めた。
薄暗い空間の一番奥に、漆黒のマントが掲げられていた。
そっとベッドに歩み寄ると、投げ出された逞しい輪郭がぼんやりと浮かび上がる。
規則正しく上下するつるつるの胸板を見下ろし、ピンクは笑みを深めた。
よかった。
実は、寝る前に〝特別なお茶〟を飲んでもらったのだ。
そう簡単には起きなくなる薬を溶かした特別なお茶を。
ピンクは、ブラックの裸体を見下ろした。
ム・ナーゲのないこの身体に憧れるようになったのは、いつだっただろう。
最初は、助けてもらった恩を感じていたんだだけなんだと思う。
颯爽と現れたヒーローに対する、飽くなき憧れの気持ち。
ただそれだけだった思いが、いつしか狂おしいほどの恋心に変わった。
拙くて幼い感情だということは自覚している。
ブラックが、そんな自分に合わせてくれていることも。
だからこそ、ミッション・ちんリウムの成功が重要なのだ。
ピンクは、引き締まった身体の中心にぶらさがっている大きなちんリウムを見つめた。
☆ミッション2:ブラックのちんリウムを光らせよう!
眠っているからなのか、ブラックのでかちんこは、重力に導かれるままダラリと垂れさがっているだけだ。
ピンクはほんの一瞬だけ躊躇ってから、光ることを忘れたちんリウムに手を伸ばした。
指先が触れると、ピクンと僅かに痙攣する。
「ふふっ……」
思わず溢れかけた笑いを慌てて飲み込み、小さく咳払いした。
ブラックの瞼がしっかりと閉じたままなのを確認して、ピンクはブラックの下半身に跨った。
ベッドが、ギシ、と大きく軋み一瞬身体を硬ばらせるが、ブラックが起きる気配はない。
ふぅ、と安堵の息を吐き、ピンクはブラックのちんリウムにそっと両手を添えた。
ブラック自身が巨根だと誇るちんリウムは、その二文字に見合う以上に大きく、太い。
ピンクの手では、しっかりと握りしめることもできないくらいに。
どうやったら、こんな風に大きくなるんだろう。
なにを食べたら?
湧き上がる嫉妬を隠せないままパクンと口に含むと、今度はちんリウム全体がビクンと跳ねた。
すっかり気を良くしたピンクは、んぐ、んぐ、と一生懸命頭を上下させる。
半分までようやく咥えたところで、先端が咽喉の奥に当たった。
完全に空気の通り道を塞がれ、嘔 きかけて慌てて深度を元に戻した。
唇を窄めて、精一杯のところまで口内に含んでは、引き抜く。
徐々に速度を速めながらそれを繰り返していると、舌の上が苦みでいっぱいになってきた。
じゅっ……ぽん!
「膨らんだ……!」
憚りもせず淫らな音を立てて吐き出し、ピンクは手の中で天に向かってそそり立つそれをうっとりと見下ろした。
自分の拙い愛撫に反応してくれたのかと思うと、愛おしさが増してくる。
自身の小ぶりなちんリウムも甘い蜜を溢れさせていることに、ピンクは気づいていなかった。
☆ミッション3:ブラックのちんリウムを滑 らせよう!
グリーンにおねだりして分けてもらった〝特別に粘度が高く乾きにくいぬめぬめ〟を、光り始めたちんリウムの上にたっぷりと垂らす。
側面を辿り始めたそれをすくい取り、ピンクは自身の手指に丁寧に塗り広げた。
闇に慣れた視界の中で、指先が艶やかにテカる。
ピンクはブラックの胸板に上半身を預け腰を上げると、手探りで後ろの窄まりを目指した。
そしてたどり着いたそこに、ゆっくりと指を刺し込む。
あまりの不快感に涙が溢れそうになるが、ピンクは意を決して指を増やした。
柔らかく解れたそこは、三本目の指もいとも簡単に飲み込んでいく。
この日のために、毎夜グリーンと特訓してきたのだ。
血……は滲んでないかもしれないが、気の遠くなるようなトレーニングの日々だった。
最初は先っぽを挿れただけで、キツくて苦しくてしかたなかったレッドのお下がりバイブ。
今では、根元までしっかりと咥え込めるようになった。
それでも、ブラックのちんリウムは、そんじょそこらのバイブよりも遥かに大きい。
そして太く、長い。
だからこそ、最後の解しの手を抜くわけにはいかないのだ。
くちくちと粘り気のある音をさせながら、ピンクの指はその控えめな後孔をゆっくりと、しかし確実に押し拡げていった。
遠慮なく体重を預けているせいか、寝ているブラックの喉の奥から微かなうめき声が漏れ、眉間に皺が寄る。
「まだだよ、まだ起きないで」
ミッションの成功まで、あと、すこし――
☆ミッション4:いざ、パーフェクト・ちんリウム!
怖い or 怖くない?
そう問われたら、答えは前者。
それでも、彼が自分を思ってくれるように、自分も彼を思っているのだと伝えたい。
言葉だけじゃきっと、子供の戯言だと笑われるだけだから。
「んっ……」
天井に垂直にそそり立った巨大なちんリウムを、すっかりトロけた割れ目にあてがう。
それだけで僅かに入り口を押し拡げられる感覚があり、身がすくんだ。
一瞬心を覆いかけた恐怖心を、頭を振って払拭する。
「絶対、ブラックとパーフェクト・ちんリウムするんだから!」
ゆっくり息を吐きながら、体重をかける。
なかなか最初の一歩が進まない。
自分の指はあっさりと受け入れたそこが、すっかり頑になってしまっている。
やっぱりもっと太いバイブでも練習を重ねるべきだっただろうか。
自分にはまだブラックとのパーフェクト・ちんリウムは無理だったのだろうか。
落胆し、深い息を漏らした――とき。
「は、ぁんっ……!」
ぐぽんっ、と鬼頭が飲み込まれ、メリメリと入り口の筋肉を押し拡げられた。
突然最大になった圧迫感に、ピンクの腕が小刻みに震える。
そうしている間に、ブラックのちんリウムがどんどん中に侵入してきた。
まるで、突破口が開けたかのように。
「あっ、あっ、あっ、待って……!」
交わりが深くなるたびに内臓が押し上げられ、口から何かが飛び出してきそうな気がする。
「あん!ま、待っ、待って、待ってぇ……っ」
「待たない」
聞こえるはずのない声が、聞こえた。
「ブ、ブラック、起きて……!」
「なにか企んでいるとは思っていたけれど、まさかこんなことだったとは……ね」
ユサユサと腰を揺すられ、ピンクの吐息が一気に艶を帯びる。
「あ、ああぁん!お、お茶、飲んだのに……っ」
「飲むフリをしたんだよ。まさかこの私がお前の猿芝居に引っかかるかとでも思ったのかい?」
藤色の幼い瞳に、透き通った感情がなみなみと込み上げてきた。
「んぁあっ!そ、そんなぁ……っ」
猿芝居だなんて、そんな言い草ひどいじゃないか。
そりゃあ確かに、ものすごく噛んだし、ものすごく声が震えたし、右手と右足が一緒に出てしまったりはしたけれど。
「が、がんばったのに……っ」
「私を夜這いしたくて?」
「ちがう!特訓、したから……パーフェクト・ちんリウムできるよ、って、ブラックをびっくり、させたかったんだもん……っ」
ブラックは、巨根を受け止めギチギチと軋むピンクの孔 に手を這わせた。
小刻みにヒクつくそこは、ぬめぬめでドロドロだ。
「ピンク……私とパーフェクト・ちんリウムがしたくて、自分で解したのかい?」
「う、うん……っ」
「指を、突っ込んで?」
「うん……!」
「ローションまでぶち込んで?」
「うんっ……うん……っ」
ピンクの中で、ブラックのでかちんこがさらに巨大化した。
「ピンク、お前って子は……」
なんて素直で、
なんていじらしくて、
なんてかわいくて、
なんて、愛おしい。
「大人を煽るとどうなるか、教えてあげよう」
「あぁん……!」
勢いよく身体をひっくり返され、繋がったままの接合部がぐちゅりと淫らな音を立てる。
ちんリウムの挿入がさらに深くなり、ピンクの息が詰まった。
「も、もう、パーフェクト・ちんリウムに、なってる……?」
「冗談だろう?いつものハーフ・ちんリウムにもほど遠いくらいだよ」
「そんな……」
もう、いっぱいいっぱいだというのに。
やはり、自分にはまだパーフェクト・ちんリウムなんて無理だったのだろうか。
言いようのないやるせなさが、ピンクの目尻から雫となって次々と溢れ出した。
ちゅっ、ちゅっ。
ブラックの尖った唇が、熱い塩水の粒を吸い取っていく。
それはまるで、父が息子にそうするような、兄が弟にそうするような、慈愛に満ちた優しいキス。
嬉しくて、くすぐったくて、でも、子供扱いされている自分がいたたまれなかった。
「うっ……うぅ……っ」
「ピンクはどうしてそんなにパーフェクト・ちんリウムにこだわるんだい?」
「だって……全部、ほしいもん……」
「欲張りな子だね、まったく」
違う。
これは〝欲張り〟なんかじゃない。
「ブラック……だから……」
「ピンク?」
「ブラックだから、ブラックのちんリウムだから……だから、全部……ほしいんだもん。ほしいのは、ブラックのちんリウムだけだもん……!」
ピンクを見下ろすブラックの目が、瞬きを止めた。
「ブラック……?」
「しょうがない子だ。俺がどれだけ必死だったのかも知らずに」
必死ってなにが、と紡ぎかけた言葉は形にならずに、悲鳴に変わった。
ブラックが、ぐぐぐぐ……と無遠慮に腰を推し進めたのだ。
わずかミリ単位の変化なのに、ピンクは苦しくてたまらなかった。
あんなに特訓して、あんなに解して、あんなに柔らかくなったはずのお尻が、いたい。
「や、やっぱりもうむ……」
「無理、だなんて言う気じゃないだろう?」
黒曜石 のようなふたつの瞳が、野生的な情欲を隠しきれずにいた。
その強い視線に操られるようにピンクがふるふると首を振ると、圧迫感が一気に強くなった。
自分も呼吸を乱しながら、ブラックは腰の動きを止めない。
生理的な涙が溢れ、ピンクの耳に溜まっていく。
やがて――
「んっ、んんんんあああっ!」
パンッ、と肌と肌が激しくぶち当たった。
湿った皮膚が尻肉に触れ、不思議なくすぐったさが下半身を撫でる。
ああ、これは、
大好きなひじき。
「パーフェクト・ちんリウムになったよ」
「はっ……あっ……」
「大丈夫かい……?」
「んっ……ん、んっ……」
きちんと言葉で答えたくて、でもなにかが押し出されそうで喉を開くことができない。
ただ必死に首を縦に動かすと、そっと頬が挟み込まれた。
大きな手のひらが、熱い。
「ローゼオン、正直に言いなさい」
呼ばれた名は、大人の情欲に塗 れていた。
それなのに、心配そうに揺れる漆黒の瞳。
ちっぽけな自分が、鏡のように鮮明な世界に閉じ込められている。
苦しい。
息ができない。
抜いて。
もう許して。
助けて。
気を抜いたら、そんなことを口走ってしまいそうになる。
でも、それらをかき消すように湧き上がってくる温かいものがあった。
ブラックの下腹部と、自分のお尻が、直接触れ合っている。
硬く大きなちんリウムが、自分の中でドクンドクンと脈打っている。
そう実感するだけで、もう、
「うれしい……っ」
ブラックは大きく喉仏を揺らし、いきなり激しい抽送を始めた。
ずるずると内壁がめくり上げられ、その次の瞬間には乱暴に押し込まれる。
これまでとは比べものにならないくらいの、熱く激しいちんリウムパーティー。
「あっ……あ、あ、あ、ブラックっ……ブラックぅ……!」
どうにかなってしまいそうで広い背中にしがみつくと、応えるように強く、強く抱きしめられた。
「すきっ……すきぃ……っ」
「ピンク……っ」
「ブラック……ブラック……ッ」
激しく揺さぶられ、だんだんと曖昧になっていく世界。
愛しい人の姿だけは留めておきたいと、ピンクはブラックの黒い瞳を見つめ続けた。
***
上半身に腕を巻きつけ、すやすやと寝息を立てる少年をじっと見下ろす。
頰には、涙の跡が幾筋も。
悲しみから生まれた雫ではないと分かっていても、つい心が痛んでしまう。
これが親心というものか。
そう思いかけて、ブラックは自嘲するように口角を上げた。
この感情は、もう親心なんてピュアな言葉で言い表してはいけないものになってしまった。
自覚はあった。
自覚はあって、それでも、まだ早い、そう思って抑えていたのに。
「明日は休ませるか……ゴールドにどやされるな」
手を這わせた背中は、細く幼い。
巨根 を受け入れるために、当たり前のように自分で指を突っ込んだピンク。
意識を手放すまいと必死にすがりついてくる姿が、かわいくて仕方なかった。
そっと撫でた柔らかい頰が、ふにゃあ、と緩む。
「えへへ……ミッション・ちんリウム、完了……」
ブラックは噴き出した。
いったいなんの夢を見ているんだろう。
そこに自分も登場していてほしい。
そんな風になんて思ってしまうなんて、どうかしているだろうか。
溢れ出す甘い感情を抑えきれず、ブラックはピンクの額にそっと口づけを落とした。
fin
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