21 / 50

2人で最後の ②

「はっ、せいぜいヒーヒー言わせてやるよ。覚悟しな」 「先輩はいつもベットでヒーヒーですけどね」 一瞬で顔が赤くなり、 「柴崎てめえ!」 「お前らー、鳴らすぞー!」 ピーッ! プレイスタイルが正反対の2人の 1ON1は始まった。 コート周りは静まったまま。みんなどちらも応援しない。 いやできなかった。皆思っていたからだ。 この2人は別格だろうと。そして本当に最後だろう。 2人のプレーをボールのドリブルの音、バッシュのきしみ音だけで感じていた。 「はっパワーだけで勝とうとすんなよ?」 根屋が柴崎の脇をすり抜けた瞬間。 ピーッ! 「終了だ。約束の5分だ」 キャプテンも少し残念そうに言った。 「キャプテーン。あと3分!」 へろっと柴崎が言った。 「ダメだ。約束が違う」 「フリースロー。フリースロー。それならいいでしょ? キャプテンがトイレに行ってる間にひょろっとできちゃうよ?」 「ふーーーー」 ため息が深い。 「一本だけだ」 「やったー。」 部員たちの歓喜の声が上がる。 「どっちからいきます?先輩」 「俺が勝つからどっちでもいいぜ」 「じゃ、俺から」 軽くドリブルをして位置に着く。ボールに手を添え、ゴールポストを見つめる。 『まっすぐな目だな。迷いがない。たまにアイツ俺をあんな目で見るな お前にそう見られるの俺は嫌じゃないんだぜ。だから俺のことを見ておけよ』 スパッ リングに触ることもなく柴崎のボールはゴールに吸い込まれていった。 コートの端から大歓声があがる。 『まっすぐでまつ毛の長い目。でもちょっともろくて、抱きしめてあげたくて 白くて、やわらかくて、照れくさそうな笑顔。たくさん包んであげたかった』 『春がこなければいいのに・・・』 『春がこなければいいのに・・・』

ともだちにシェアしよう!