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第2Q ②
ピーッ!
ホイッスルが鳴る。ハーフタイムに入った。
汗まみれの選手たちの中から根屋を担ぎ上げ、
「村田さん、結木さん、クーラーボックスとメディカルボックスお願い!」
「あ、は、はい!」
控室に入るなり柴崎は根屋の靴を脱がす。
「アイシングして!」
自分はメディカルボックスからテーピングテープ用テープを出す。
「やったか?」
新田が静かに柴崎に聞く。
「まだ大丈夫です。捻挫までいってません。ただ先を慎重に考えると・・」
「何だ、なに勝手に話進めているんだよ!足なんか痛くねえよ!」
柴崎と新田の会話に置いてけぼりになって根屋が噛みつく。
「根屋先輩、今日初日ですよ?明日、明後日、無理がたたって決勝に出られなくて
ベンチで優勝とかしたいですか?・・・それに足の事は俺の方が知っているつもりです」
根屋は黙りこむ。足の事なんて柴崎にはタブーに決まってるんだから。
「根屋、第3Qからは俺が出る。お前はベンチだ。歩きたくなければ、ここにいていい」
「ごめんね村田さん。荷物お願いしていい?」
ハーフタイムが終わるころ選手たちはコートに戻っていった。
根屋はずっと座り込んだままだ。
「すみません根屋先輩。明日以降を万全にしてあげたかったんです」
「本当だな?」
「はい。大丈夫ですから安心してください」
「今、誰もいねーけど・・・」
『おや?』
軽くキスをする。
「安心して五月。何があっても俺が守るから頂点めざそうね」
「ん・・・」
根屋が柴崎の首に手を回してきた。甘えるようなキスだった。
柴崎は根屋の髪をなでながら、同じようなキスを返していった。
柴崎に抱き着き、甘えるように舌を絡める根屋。
『んー?なんか子猫ちゃん化がすすんでいる?』
『二人の時、積極的に甘えてくるよなあ?』
「で、どうだ?」
顧問が聞く。
「とりあえず第3Qからは俺が出ます」
新田が答える。
「わかった」
『で、なんであの時お姫様抱っこで運ばれたんだ?』
顧問も、新田も、部員も、マネージャーも、これは言葉にしちゃいけないんだ。と思った。
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