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第3試合
「どうですか?」
「おし!全然問題ねえ!」
痛みなどはないが、一応根屋はテーピングをして足を固定した。
「新田さん」
柴崎が視線を送る。
「じゃあ、先発で行かせるが柴崎のNGが出たらすぐに下げるからな」
「うるせーなー。わかってますって。柴崎もNG出すなよ!」
柴崎が驚いた顔を見せると、根屋は笑顔でコートに向かっていった。
「今日はいい感じだな」
「そうですね。言っては失礼ですが、やや格下ですので。
ただ明日の試合がありますから、新田さんと交代させますが。
今、根屋先輩にいう事きかせられるの新田さんだけですし」
「ははっ。俺は猫の首輪付けかよ」
そんな和やかな会話をするくらいベンチは落ち着いていた。
そう、ハーフタイムまでは。
「だから何で俺を下げるんだよ!」
汗まみれの根屋が叫ぶ。
「体力温存ですよ。もう、強豪しか残っていないんですよ?
新田さんだってちゃんと選手登録してあるし問題ないです。
足の動かない決勝なんて嫌でしょう?」
「ちょっと来てください!」
「うるせえな!話まだ終わってねえだろ!」
騒ぐ根屋をぐいぐい連れていく柴崎。
休憩中の他のメンバーは
『根屋先輩にあそこまで言えるのって新田さんと柴崎だけだよなあ』
ハーフタイムで皆が控室を使っているので、建物の柱わきの壁に入り込み柴崎が言った。
「あのね五月さん?五月さん結構限界来てるの。残念だけど二年が
五月さんに合わせられるレベルまで上がりきっていないんだ。
だから新田さんと交互に出てもらって、何とか切り抜けてる。
お願い。だから我慢して?」
柴崎が根屋にそっとキスをする。
「・・・足りない」
柴崎は少し困ったように笑って、根屋を奥に隠して、
優しく舌を絡ませた。するとその舌は強く吸われ、じゅるりと唾液が混ざり合う。
『んー。なんかこのウインターカップやっぱり変だよなあ?』
少し柴崎は疑問を持ちつつ、足早に控室に戻る。
すごく不機嫌な選手がいたが相生の快勝だった。
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