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第5話
縢side
教室に行ったら、猫を被り誰にでも優しくて、笑顔を振りまくんだろうな…。
凛の生き方はすごく辛そうだ。出来のいい兄と常に比べられて育ち、彼自身もまた成績、運動神経共に良かった。ただ、兄が優れ過ぎているが故に、それぐらい出来て当たり前と誰も褒めることをしなかった…
「凛…。俺、素のままの凛も、猫かぶってる凛も好きだ。それにお前は凄いと思うぞ。そんな不安そうな顔するなよ」
「………はぁ…。縢にはバレちゃうか…。そうだな、かなり不安だ。でも、僕には縢がいるもんね。大丈夫…大丈夫……」
褒められたことがないと言うことはそれだけで喜びを一つ失う…。失い続けると、その喜びを手に入れることを諦めてしまう。だから凛は、誰にも何に対しても興味を持たない。
誰でも等しく優しいが、逆に言えば誰にも興味がないから、踏み込んで欲しく無いところは全て見なかったことにしてる。
「おはよ〜。君名前は?」
「おはよ…、俺は江野 一馬(えの かずま)。よろしくな」
「あ、普通こっちから名乗らないといけないんだよね…。ごめんね。僕は、葵 凛。でこっちが幼馴染の蒼葉 縢。二人合わせて "かがりん" だよ!よろしくねっ!」
「ふはっ…、あはは、ははっ…。面白っ…、コンビ名かよ…。あはははっ………」
何気に俺のことも紹介してくれる。喋るのが苦手だから正直有難い…。社会に出たらそんなこと言ってられないんだろうけど…。今はまだ甘えていたい…。
「あははっ、確かにっ……。でも覚えやすいでしょ?」
「まぁな。かがりんな、よろしく」
「…ん、よろしく」
その後も、何人か声を掛けていて、俺はその側にいた。視線が痛いから、なんとなく一人でいるのが嫌だった…。
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