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新しい出会い
ようやく玄関に辿り着くと、見知らぬ大柄の男性が丸くなって寝ていた。
「まま、だ~れ⁉」
一太が不思議そうに男性の顔を覗き込んだ。
精悍な少し強面の顔立ちと、男らしい凛々しい眉が印象的な男性。年は颯人さんくらいかな。
恐る恐る男性の肩に手を伸ばした。がくがくと指先が震える。お兄ちゃんとは別の人なのに、何でだろう。怖い。鼓動が速くなって、手だけでなく足までがたがたと震えだした。
「まま、だいじょうぶ?」
一太が心配そうに顔を覗き込んできた。
【うん、ごめんね】
息子に心配を掛けさせまいと精一杯の笑顔で答えた。
「おじちゃん、だいじょうぶ?」
一太が僕の代わりに声を掛けてくれて。
勇気を出して、肩に手を置いた。がっしりとした筋肉は無駄がないくらい引き絞まっていた。
「まま、どちたの!?」
一太に声を掛けられ、ハッと我に返った。
恐いはずのおとなの男のひとに、なんでこうも惹かれるんだろう。自分でも不思議だった。ごめんね、首を一回横に振って、男性の肩を強めに揺すった。何度か繰り返すうち大きな体が少しだけ動いた。
「うっ・・・ん・・・わりぃ、橘・・・」
寝言を口にしながら、固く閉じた瞼が僅かに開いた。
「・・・な・・・な・・・」
形の整った肉厚な唇から零れ落ちる三文字。一瞬だけ目が合って。お酒の匂いをぷんぷん匂わせながら、男性が長い腕を伸ばし首にしがみついてきた。
【僕、゛なな ゛さんじゃないから‼】
こういうとき喋れたらどんなにいいか。酔っ払い相手に身ぶり手振り説明しても伝わる訳がないもの。
悩みに悩んだ末、男性を一旦家の中に入れることにした。でも、僕の力では、一ミリたりとも動かすことは出来なかった。
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