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新しい生活のはじまり

「寝たのか?」 その日の夜。 一太を寝かし付けていると卯月さんが部屋に入ってきた。 「起きなくていい」 ベットの端に腰を下ろすと、一太をいとおしそうに眺めた。 「橘に詳細は聞いただろう。一太を守るためだ」 卯月さんの大きな手が一太の髪を優しく撫でる。 「組幹部には、一太を新しく囲った女の連れ子だと説明した。話しの筋を通すためだ。近いうちに父と、妻に会ってもらう」 卯月さんも、橘さん同様表情一つ変えず、淡々としていた。 気色悪くないのかな。 男でもない、女でもない、中途半端な僕のこと。 「未知は未知だろ?茨木さんも若いのに頑張りやだとお前を褒めていた。俺もそう思う。だから、しばらく辛坊してくれ。なるべく、大事にする、未知も一太も」 嘘偽りのない卯月さんの言葉が胸にしみる。こんなにも他人に思われることなかったから。 何気に目が合って。 向けられた熱い視線に心臓がピクッと跳ねた。 こんなの初めて、かも。 なんだろう。 この感情・・・ 恋が何なのか知らない。 甘いのか、苦いのか。 恋を知る前に、誰かを好きになる前に、お兄ちゃんに無理矢理関係を強いられ、一太を授かり、その事実から目を背けるように今まで夢中で生きてきたから。 自分を好きになれない僕が、誰かを好きになれるんだろうか。

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