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新しい生活のはじまり
こうして一太と、彼と、しばらくの間僕専用の護衛に就くことになった橘さんと4人での生活がはじまった。
といっても、卯月さんには別に帰る場所があるから。夕飯を食べ終わると、慌ただしく奥さんが待つ自宅へと帰っていく。
そんな生活が一週間ほど続いたある日。
いつもなら、バイバイと笑顔で彼を見送る一太が、今日に限って駄々を捏ね、なかなか離れようとしなかった。
「困ったな」
これにはさすがの彼も困り果てて。
「おじちゃんといっちょがいい!」
わんわんと泣き出した一太に根負けし泊まることになった。
「遊ぶぞ一太」
って、鬼ごっこを始めた。
どっちが子供だか分からない。
卯月さんと一緒に寝たいとまた駄々を捏ねた一太。同じベットで一太を真ん中に、川の字で3人で寝ることに。
さっきから妙に落ち着かなくて。視線は宙をさ迷い、一太へと手を伸ばせば指先が彼の手に触れて。その度に心臓がドキドキし、心拍数が一気に跳ね上がった。
「どうした?顔、赤いぞ」
苦笑いされ、慌てて顔を逸らした。
意識しないようにすればするほど、彼が気になって仕方がなかった。どくんどくんと心音が喧しくて。彼に聞かれていないか、気が気じゃなかった。
何人もの舎弟を抱えている彼。普段の彼は、寡黙でほとんど笑わない。近寄りがたい雰囲気を醸し出している。
泣く子も黙る若獅子と揶揄され恐れられている彼も、一太の前では形無し。デレデレになってしまうから本当、不思議。
「おじちゃん」
「ん!?」
「なんで、ままとけっこんしないの?なんで?なんで?」
好奇心旺盛な一太。
恐るべし、魔の2才児。
容赦ない質問攻めに、さすがの彼もタジタジになっていた。
「まま、おじちゃんより、はやとしゃんがいいの?」
【え?ちょっと、待って!!】
無垢な好奇心は時に新たな波紋を生む事もしばしで。止める間もなく飛び出した質問に全身凍り付いた。
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