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大好きな彼と一太と、はじめてのデート
卯月さんがどんな反応を示すか、怖くてまともに顔を見れなくて、下を向いていると、くすっと笑う声が耳に入ってきた。
「何事かと思えば・・・」
おっかなびっくり顔を上げると、視界に笑顔の彼が飛び込んできた。
「頑張って書いてくれたんだろ?ありがとう。未知の気持ちがよく伝わってくるよ。俺の方はいつでもいい。未知の休みに合わせるよ」
「あちた、おやちゅみ!」
「そっか、じゃあ、明日行こうか?」
「うん!」 目をきらきらと輝かせる一太を、目を細め見つめ返す卯月さん。
「明日は大事な会合があるのでダメです」
ガタンとドアが開いて、顰めっ面し声を荒げながら森さんがツカツカと入ってきた。
数週間前、颯人さんに連れてきてもらった動物園に、今度は卯月さんに連れてきて貰ってる。同じ場所、同じ光景が広がっているはずなのに、一太にとっては、見るもの全てがはじめてそんな感覚なのだろう。だからかいつもよりテンションが高い。
「ぱぱ、あっち」
「おぅ」
今日だけおじちゃんをぱぱって呼べるか?急にそう言い出した彼に、一太は笑顔で大きく頷いた。周りがみんなパパとママなんだ、一太だけかわいそうだろ?彼の言うことも分からないでもないけど。 内心はすごく嬉しい。今日一日だけでも、彼とずっと一緒にいれるんだもの。誰の目をはばかることなく隣にいれるんだもの。嬉しくない訳ない。
「未知、先に行ってるな」
一太に服の裾を掴まれ、ぐいぐい引っ張られていく彼の後ろ姿を、レンタルしたベビーカーを押しながら追い掛けた。
組幹部の会合より、未知や一太と過ごすのが優先だーー 森さんにキッパリそう言い放った彼。 赤の他人である僕らを大事にしてくれる。甘えちゃいけないのは分かってる。 分かってるけど・・・ 嬉しい気持ちが半分、複雑な気持ちが半分。 二人の後を追い掛けながら、自然とため息が漏れた。
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