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大好きな彼と一太と、はじめてのデート
卯月さんはどこにいてもよく目立つ。人目を引く華やかな容姿に誰もがすれ違い様に思わず振り返っていた。
那奈さん・・・どうか彼を僕にください。
決して口にしてはいけない言葉。
彼を好きになるばなるほど、胸が押し潰されるように苦しくなる。
一太のはしゃぐ声を聞けば聞くほど、余計つらくなる。
「未知、森に言われたこと気にしているのか?」
ベンチに一太を座らせ、持ってきたおやつを食べさせていたら、卯月さんが隣に座り込んできた。
「橘も気にするなって言ってただろ?暗い顔より、笑った顔の方が未知らしくていい。森は、知り合いからの預かりもんなんだ。いろいろ言われ腹が立つだろうが、我慢してくれ」
彼の手のひらがふわりと手の甲に触れてきて、ぎゅっと握り締められた。
心臓が飛び出すんじゃないか、そのくらいドキドキして。頬から耳まで朱色一色に染まった。
「橘の言う通り、俺の愛人として、堂々としていればいい」
トドメを刺すように、熱っぽいまなざしを向けられて。体内の熱が一気に上昇した。
まともに顔を見られなくて、気恥ずかしいままうつむくしかなかった。
うさぎに餌をあげたり、ふわふわの背中を撫で撫でしてキャーキャーと黄色い声をあげて騒いだり、勇気を出してポニーに近付いたら持っていた人参ステックを全部食べられて大泣きしたりと、目まぐるしいく変わる一太の表情を見ているだけでも楽しくて。卯月さんも一緒に笑ってくれるから尚更なのかも知れない。
お昼は、芝生の上にレジゃーシートを敷きお弁当を広げた。
「なんか、いいよな。こういうの」
お握りをむしゃむしゃと一心に頬張る一太を目を細めて眺めていた卯月さんがポツリと呟いた。
「子供がいれば、家族で動物園とか遊園地とか色々と出掛けられるだろ?こういうのにずっと憧れていたんだ。未知、ありがとう。一太もパパって呼んでくれてありがとうな」
今まで見たことがないくらい穏やかな笑みを浮かべ、一太の頭を撫でてくれた。
「ぱぱ、ぺんぎんさん」
「おぅ、飯食べたら見に行くか?」
「うん」
こういうのを家族団欒っていうんだろうな。きっと。考えてみたら家族揃ってこういうところに来たことがないかも。
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