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大好きな彼と一太と、はじめてのデート
「どうした?」
視線が何気に合い、ぶんぶんと横に振った。 決して報われない、叶わぬ恋は、現在進行形のままどこまで続いていくんだろう。
「いちいち迎えに来なくていいから 。てか、なんでお前までいるんだ」
ペンギン舎を見たあと、近くの売店に入ると橘さんがなぜかいた。はじめてみる長身の男性と一緒だった。卯月さんはその男性の顔を見るなり眉をひそめた。
「会合そっちのけで、若い愛人に入れ込んでると幹部連中が嘆いていたから、顔を拝みにきたんだ。へぇ~なるほど」
男性は成熟した大人の雰囲気を漂わせていた。顔かたちがどこか卯月さんに似ていた。 普通、同性の愛人なんて有り得ないのに。彼は一つも驚かなかった。その理由はすぐ分かった。
「彼は、縣遼成。従兄弟なんだ。同じ会派の縣一家の組長代理をしている。彼も、彼の弟も同性婚をしている。話し方が橘そっくりで、俺が一番苦手な相手だ」
「そういう紹介の仕方はないだろが」
「本当の事を言ったまでだ、何が悪い」
しれっとして答える卯月さんに、縣さんはため息を漏らしていた。
そんな彼と何気に目が合って、慌てて頭を下げた。
「未知さん、初めまして。縣です。卯月は女たらしで酒癖も悪い。別れるから今のうちですよ」
「ちょっと待て!」
「待ちません。こんな中年のオッサンのどこがいいんだか。なんなら、卯月よりましな男性を紹介しましょうか?」
「縣、いい加減にしろ!」
一太は、 ヒートアップする二人の口喧嘩を、あんぐりと口をあけ不思議そうに首を傾げて聞いていた。
「未知さん、折角のデートなのに邪魔してすみませんね」
橘さんに声を掛けられ、首を横に振った。こうして、素の姿を垣間見ることが出来て嬉しかったから。
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