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大好きな彼と一太と、はじめてのデート

「未知さん、縣はあぁ見えてとても家族想いなんですよ」 橘さんがそう言って。二人を宥めに行ってくれた。 「縣、卯月は奥さんより未知さん一途ですよ。お互い年が離れていること気にしてませんし。心配しなくても相思相愛ですよ」 橘さんの言葉にドキっとした。 卯月さんが好きなこと、彼に知られてしまうんじゃないかとヒヤヒヤした。 【二人してそんなに見ないで欲しい】 心の中まで暴かれるようで怖くなった。 「まま、どうちたの?」息苦しい空気を変えたのはやはり一太だった。 「一太くん、このおじちゃんが欲しいものはなんでも買ってくれるそうですよ」 橘さんが腰を低くし一太の顔をのぞき込んだ。 「ほんと?」 「えぇ」 橘さんに言われ、一太は恐る恐る縣さんの顔を覗き込んだ。 「あのな、橘」 「かわいい甥っ子が一人増えたと思えばいいでしょう」 戸惑う縣さんにはお構いなしで。 「たく、仕方ないな。何が欲しいんだ?」 「いちたね、ぺんぎんしゃんのにんぎょうほしいの」 「にんぎょう?」 「うん、おじちゃんこっちだよ」 遠慮するという事を知らない一太は、縣さんの手をむんずと掴むと店の奥へ真っ直ぐ向かった。颯人さんと来たときは欲しいぬいぐみがあっても我慢した。一太なりに颯人さんに気を遣ったのだろう。

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