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大好きな彼と一太と、はじめてのデート

「これはこれは、拝島さん。お久し振りですね」 縣さんが姿を見せた途端、男性の顔色が変わった。 「卯月さんも人が悪い。縣さんが居るならそう言ってくれればええのに」 媚を売るように腰を低くし、何度もペコペコと頭を下げそそくさと退散した。 「手嶌組は、縣一家の枝・・・分かりやすく言うと、縣一家が直参の二次団体で、手嶌組はその下」 聞き慣れない言葉ばかりで。 頭の中がちんぷんかんぷんになって、更に混乱したのはいうまでもない。 そのあと、おっきなペンギンのぬいぐるみを両腕に抱えた一太と合流し、これから彼氏とデートらしい縣さんと別れ、家路についた。 そのあと、おっきなペンギンのぬいぐるみを両腕に抱えた一太と合流し、これから彼氏とデートらしい縣さんと別れ家路についた。 「わりいな、一太。おじちゃん用事が出来た」 「えぇ!」 家に着くなり、彼の携帯が鳴って。 急にそわそわしはじめた。 「いちたとたべるやくそくは?」 「ごめんな、この穴埋めは必ずするから」 唇を尖らせる一太の頭を撫でて、上着を羽織り、リビングを後にした。 「未知さん、追い掛けなくていいんですか?彼が好きなんでしょう?」 台所に向かおうとしたら橘さんに腕を掴まれた。 「卯月を誰よりも愛しているなら、那奈さんの許に帰る彼を止めたらどうですか?一太くんの為なら、貴方にできるはずです。那奈さんから彼を奪ったらいいんです。所詮は組同士の繋がりを重視するため、無理矢理結婚させられた者同士。貴方が愛を知らないように、彼も本当の愛が何か、それを知らないんです。未知さんと一太くんと出会い、彼は家庭の温もりを知りました」 語気を強める橘さん。目は真剣そのもので。 「未知!」 もう一度、初めて呼び捨てで名前を呼ばれ。 「卯月を愛してやって下さい。お願いですから」 深々と頭を下げられた。 誰よりも彼が好き。 あなたに出会って、人を好きになることが、こんなにも辛くて苦しいことだと初めて知った。 けれども、それでもーー それでも、彼と一緒にいたい。 だって、誰かを好きになる幸せを教えてくれた大好きな人だから。 【卯月さん!】 今、伝えなかったら一生後悔する。 例えそれが奥さんにを裏切る行為であっても。 彼のあとを急いで追った。

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