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大好きな彼と一太と、はじめてのデート
「どうした未知?」
玄関のドアノブに手を置いた彼が、驚いたように振り返った。 こういうとき言葉を話せたらどんなにいいか。喋ることが出来ない自分が歯痒い。悔しい。 どうしたら気持ちを伝える事が出来るんだろう。言葉で表現出来ないならーーそう、行動に移すまで。この期に及んで、今さら恥ずかしいなんて言ってられない。 つま先立ちで精一杯背伸びし、彼の襟を掴み、ぐっと自分の方に引き寄せた。唇が軽く触れ合うだけのキス。それだけで、じんじんと体が熱くなった。 やっぱり彼が好き。
「たく」
一瞬、瞠目した彼が舌打ちをしたのが分かった。
「未知・・・」
艶のある微かに掠れた声で名前を呼ばれドキリとした。
【う、卯月さん!】
抱き締め返され、上顎を長い指で掬い上げられると幾度なく口付けが唇に触れた。
「・・・たく、俺がどんな思いで、今の今まで我慢してきたと思っているんだ」
卯月さんが困ったようにため息を一つ吐いた。
「ヤクザの言うこと、信じて貰えないと思うが。初めてお前に会った時、一目で好きになった。一太も可愛いよ。勿論。それ以上にお前が可愛くて仕方なくて・・・酔いも一瞬で冷めた。ただ側にいてくてくれるだけで俺は幸せだった。まさか、未知から告白されるとは思ってもみなかったよ」
いつになく真剣な表情で見詰められ。 彼も同じ気持ちでいてくれたことが、何よりも嬉しくて。涙が溢れてきた。
「泣き虫、なんだな・・・」
苦笑いされ、濡れる瞼に優しい口付けをされた。 触れる唇は仄かに熱く。 秘めた情熱を感じ、思わずすがり付くように彼にしがみついた。
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