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それでも彼が好き

一太がいつ目を覚ますか分からないのに。 ベットに座って、何も言わず、触れあうこともせず、ただ静かに彼と見詰め合った。 瞳の中に自分だけが映っている。 一太でも奥さんでもなく、僕だけが。 それだけでも涙が出るくらい嬉しいのに。 大人の雰囲気を纏わせ、凛々しい精悍な顔立ちで見詰められて。 改めて知った。 息も止まりそうに好きで、好きで。 たまらなく彼が大好きということ。 ただ一心に彼を見詰めていると、彼の指がそっと頬に触れてきた。 「・・・よく聞いてくれ。昨日那奈に、その・・・離婚届を渡した。未知にちゃんとプロポーズしたかったから。まさか、お前から告白されるとは予想外だったが」 親指が軽く唇を押し、そっと撫でられた。 「愛人でもなく、恋人でもない。妻として側にいて欲しいんだ。一太の父親になりたい。だめか?」 答えないでいたら瞼にキスをされ、シーツの上に置いていた手に、もう片方の手が重ねられ、ギュッと握り締められた。 その時はじめて気が付いた。 彼の指から結婚指輪がなくなっていることに。 「形だけの夫婦にどうしてもケジメをつけたかった。再婚相手の継父に虐待され死ぬ子供の惨たらしいニュースがあとをたたない。年も、住む世界も違う・・・でもな未知、よく聞いてくれ。俺は一太を親父や、幹部連中に、実の息子として育てるそう宣言した上で引き合わせた」 それが何を意味するかいたいくらい分かるから。 胸が締め付けられるように切なくなった。 「俺は本気だ。誰よりも何よりも未知や一太を愛している」 嘘偽りのない彼の告白が嬉しくて。 溢れる涙を止めることは出来なかった。

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