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新しい名前

まさか橘さんがそんな事を考えていたなんて。にわかには信じられなくて。何かの聞き間違いかと思ったけれど。 「那奈さんにお子さんが出来ないなら、他の女性に産んで貰うしか手段がないでしょう。由緒ある龍一家の血筋を守るためにはそれしか。ですから卯月が好みそうな女性を探しだし、彼に侍らせましたが、誰一人卯月の子どもを産むものはいませんでした。組長が外で産ませた子・・・つまり卯月の弟を跡取りにすると急に言い出して、子守りを卯月に押し付けたんです。誰だか分かるでしょう?」 思い当たる人は一人しかいない。 まだ一回しか会ってないけど。 森さん、だ・・・ だから、卯月さんを好きな僕を敵視し、辛くあたったんだ。 「卯月は森に器量がないのを見抜き、縣一家から養子を迎えようとしていました。ちょうどその時ですよ、卯月の前に貴方と一太くんが現れた。子供が好きで、家庭的で、自分に尽くしてくれる女性。それでいてあまり喋らないーー卯月が一番好きなタイプに、貴方がピタリと当てはまっているんですよ」 橘さんはそこで一旦言葉を止めると、まっ平らな僕のお腹に手を置いた。 「以前貴方に、卯月の子を産んだらどうですか?と聞きました。あれは冗談で言ったつもりは一切ありません。それがーー卯月の子を産むのが、貴方の宿命・・・だからです」 冷ややかな眼差しを向け、語気を強める橘さん。 僕はただ、卯月さんの側にいたいだけなのに。 子供を産ませるためだったなんて。 信じたくないけど・・・ 彼の゛好き゛は全部嘘だったんだ・・・

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