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新しい名前

橘さんがつかつかと歩み寄ってきた。そんなに眉間に皺を寄せなくてもいいのに。 「メール、確認しないんですか?」 彼の表情をちらちらと、うかがうように見ながらポケットから携帯を取り出した。画面に目をやると卯月さんからのショートメールが届いていた。 《三十分後迎えに行く》 用件のみの簡単な文章でも飛び上がるくらい嬉しかった。例え騙されているとしても、彼を信じたい気持ちの方が勝っていたのかも知れない。 《一太と待ってます》 緊張で震える指で文字を入力して返信すると、十秒と経たず、お店のドアが勢いよく開いた。 「おじちゃん‼」 「おぅ、一太」 卯月さんが突然現れ、一太は手に握り締めていたおしぼりを床に放り投げ、大喜びで駆け寄っていった。 「あと三十分車で待っているつもりだったんだ。未知があまりにも可愛い返信寄越すから我慢できなくなった」 一太を右腕で抱き上げる彼。いい子にしていたか?うん‼頭を撫でてもらい、真ん丸の笑顔を見せる一太。 「たく、どっちが子供かわかりませんね」 橘さんはおしぼりを拾いながら呆れ果てていた。 「遥琉‼」 一度閉まったドアが再びバタンと開いて。険しい目付きで森さんが入ってきた。

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