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彼と結ばれて

微動だにしないその態度に溜め息をついて、ぶつぶつと小言を撒き散らしながら店を出ていった。 「卯月さん」茨木さんがおもむろに口を開いた。 「未知をどうするつもりですか?」 今まで聞いたことないくらい強い口調だった。 「他人が口を挟むことではないのは、重々承知しています」 卯月さんが何て答えるか気になって、カウンターの方ばかり見ていたら、ちょっとした段差に躓いてそのまま派手に転んでしまった。 「未知‼」 卯月さんが一太を脇に抱え立ち上がるより先に、茨木さんがものすごい早さで駆け付けてきてくれた。 「大丈夫か?」肩を支えて貰って立ち上がると、怪我をしていないか、あちこち確認された。 【大丈夫、どこも痛くないから】 ズキズキと刺すように痛む右の手のひらを隠すように後ろに回した。 「どこが大丈夫なんだ。手のひらから血が出ているだろう?ちょっと待ってろ」 こんなのかすり傷。 怪我のうちに入らないのに。 それなのに大慌てでカウンターに向かい、救急箱を抱えすぐに戻ってきてくれた。 「ほら、右手」 茨木さんには僕が何を考えているのか手に取るように分かるんだと思う。だから隠し事は一切出来ない。 観念し、おずおずと右手を差し出した。 その様子を卯月さんは頬杖をついて黙って見ていた。 その視線は冷ややかで。手の痛みさえ掻き消すくらい怖いものだった。

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