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プロポーズ
「まぁ、そういう事だ」
卯月さんが、一太を起こさないようにそっと横に寝かせてくれた。
【えっ・・・!?】
お尻の下に彼の手が滑り込んできて、ふわりと体が宙に浮き、横に抱っこされたまま抱き上げられた。
「一太だけズルイってだろう?分かっているよ」
【そんなこと一言もいってない】
「目がそう言ってんだよ」
【そんな・・・】
メモ帳とペンを取り上げられ、有無を言わさずそのまま書斎に連れて行かれた。
「なぁ、未知。どっちに入ってると思う?」
ベットの上にそっと下ろされると、彼が甘えるように潜り込んできて。グーに握った両手を差し出された。
僕、一太じゃないよ・・・お菓子を貰って喜ぶ年じゃないし・・・
内心そう思いながらも、彼の遊びに付き合う事にした。駄々されたらあとが大変だもの。
【じゃぁ・・・右で】
直感を信じ右手を指差した。
「アタリ、良く分かったな。実は、こっちもアタリなんだ」
片方ずつ手をパーに開くとシルバーの指輪がきらきらと光り輝いていた。「左手出して」言われた通りにすると薬指にそっと指輪を嵌めてくれた。
「きつくないか?」
ううん、大丈夫。
ずっしりとしたその重みは、彼と一生涯添い遂げる覚悟と、共に一太を守り抜く責任の重さを物語っている様だった。
「未知、俺の指にこれ嵌めてくれないか?」
彼に渡され、差し出された左手の薬指に嵌めようとした。
したけど指が震えて、なかなか上手くいかなくて。苦戦していると声を出して笑われてしまった。
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