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蜜月

「未知‼」大喜びする一太とは反対に彼の表情がどんどん険しくなっていった。眉間に皺を寄せて露骨に不機嫌そうな態度をとる彼。これってもしかすると・・・焼きもち・・・妬いてる? 「俺以外には聞かせるなって言ったはずだ」 【そんなこと言われても・・・】 そもそも卯月さんが意地悪するからでしょう‼ぶすっとする彼。その表情は駄々を捏ねる一太そっくりで。 「まま、まま‼いちたのおなまえよんで‼」 笑ったら彼の機嫌をますます損ねるだけ。 込み上げてくる笑いを我慢していたら、一太に上着の裾をツンツンと引っ張られた。 期待に胸を膨らませ、きらきらした笑顔で見上げられて。言葉に詰まっていると、爪先で指輪のまわりを引っ掻かれた。 「卯月、焼きもちを妬かないようにするという約束を早々に破るつもりですか?」 やれやれといった表情でキッチンから姿を現したのは橘さんだった。 「仮にも一太くんの父親でしょう。父親ならいちいち息子に焼きもちなんて焼かないはずですよ。そのうち未知さんにまで飽きられますよ」 「それは困る」 「あと、もう少しシャキッとして貰わないと」 「言われなくても分かってる」 「ならいいんです。一太くんおいで」 橘さんは一太には優しいけど、彼に対して容赦がない。一太を抱き上げるとテーブルへと移動し椅子に座らせた。 「取り敢えずご飯を食べましょう。ママの声を聞くのはそのあとで」 「はぁ~~い‼」 一太が素直に手を挙げた。 「いつまで未知さんの手を握ってるんですか?さっさとご飯食べて下さい」 橘さんの苛立った声に、彼びくびくしていた。 いつの間にか二人の立場が逆転していた。

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