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蜜月

「書き終わったなら寝るぞ」 ボールペンをその場に置くと、そのまま手を引っ張られベットに直行した。服を脱がされそうになり、慌てて手で押さえた。流石に三日連続は無理‼体力が持たない‼明日仕事にならないからダメ‼ 「新婚なのに!?」 ぶんぶんと首を振り必死に抵抗した。 そしたら彼、甘えるように頬っぺたに顔をスリスリしてきて。 「・・・未知・・・」 ゾクッとするくらい掠れた声で耳元に囁いてきた。 卯月さんの意地悪。 泣き落としが効果がないくらいわかってるけど・・・目を潤ませ彼を見上げた。 「泣かせるつもりはなかったんだ。すまん」 瞼に彼の口唇が遠慮しがちに触れてきた。 「今日は、何もしない」 【ほんと?】 恐る恐る彼を見詰めると、返事の代わりに上唇にチュッと軽くキスされた。 「なぁ、未知・・・」 のし掛かっていた彼がゴロンと隣に寝転がった。 すやすやと穏やかな寝音を立てて熟睡する一太の顔をそぉーっと覗き込む彼。 「一太がさぁ、パパって呼んでくれたんだ。動物園に遊びに行った時以来初めて・・・それが嬉しくて・・・」 強面の顔がみるみるうちに緩んで、目尻が下がりっぱなしになった。 「俺には心以外もう一人、真沙哉という年の離れた兄がいるんだ。三人共母親が違う。だからかな血を分けた兄弟のはずなのに赤の他人、そんな感じで・・・兄は最後の最後まで俺や心の存在を認めようとはしなかった。ゴミ以下、虫けらのようにしか思っていなかった」 そこで一旦言葉を止めると、体の向きを僕の方に変え、腰に片腕を回しそのまま力強く抱き締められた。 「俺は一太を自分の息子として育てたい。いずれ言わないといけないんだろうが。それまでは゛俺と未知の子゛としてたくさんの愛情を注いでやりたい。 物心つく頃には母と二人きりで、父親という男性がたまに来る程度で、ほんとは寂しかったんだ。だから、一太に俺と同じ思いをさせたくない」 彼のことを何一つ知らなかった。知ろうともしなかった自分に無性に腹が立った。 家族のこと、兄弟のことは勿論。 彼がいままでどけだけ辛い思いをしてきたか。寄り添おうともしなかった。 「いいよ、こうして側にいてくれれば。それだけで充分幸せだから」 ごめんね、卯月さん。 自分のことしか考えなかった愚かな僕をどうか許して。 彼の服にしがみつき、顔を埋めた。

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