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悪意

朝起きたら、手紙がなくなっていた。先に起床した彼に聞こうとリビングに向かうと、橘さんとコーヒー片手に何やら話し込んでいた。 「おはようございます」 「未知おはよう。まだ、寝てていいぞ」 こんな朝早くからどこに出掛けるのだろう?橘さん、紺色のスーツに着替えていた。 「お手紙預かりましたよ。これから未知さんのご両親に会って、直接渡してきます」 【何もそこまでしなくても】 口を動かし、首を振った。 「未知さんはまだ未成年です。ご両親がその気になれば、未成年略取で卯月は間違いなく逮捕されるでしょうね。いくら本人が自分の意思だと否定しても。そうならないように話しをしてきます」 「橘、間違っても脅してくるなよ」 「人聞き悪いことを言わないでください。そんなことしませんよ。今後一切関わるなとは釘を刺してきますけど」 「お前は未知のことになると本気になるな」 「あなたに言われたくありません」 彼に痛いところを容赦なくつかれ決まりが悪いのが、ぷいっと顔を逸らした。 「そろそろ出掛けますね」 ガタンと椅子から立ち上がると、足元に置いてあった黒色の鞄を持ち上げた。 「未知さんのご両親の態度次第では、逆に訴えることも検討しています。兄の件を隠したばかりか、一太くんの命まで奪おうとしたのですから」 橘さんが親身になってそこまで考えてくれていたなんて・・・ 「未知さんは何も心配しなくてもいいですよ。普段通りで。一太くんと、そこにいる焼きもち妬きの彼と待っていて下さい」 橘さんはそう言うと、身なりを整えて、僕の両親に会う為に出掛けていった。

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