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監禁
あれ・・・?
ここは・・・どこ?
目が覚めたとき、薄暗い部屋の中にいた。床の上にじかに敷かれたラグマットに寝かされていた。
手首を動かそうとしたけど、思うように動かなくて。目を凝らしてよく見ると、両手首を一括りにされ手錠で拘束されていた。どうにかして外そうとしたけれど、外れるわけなどなく。カシャカシャと耳障りな金属音だけが虚しく響いていた。
ママをつれていかないで‼
意識を失う寸前、一太が泣き叫び、防犯ブザーの音が鳴り響いていた。
小学生じゃないんだから、防犯ブザーなんて必要ないのに。彼が、何かあった時のためだ。そう言ってリュックに付けてくれた。
お兄ちゃんに無理矢理車に押し込まれた時、一太が偶然にもストッパーを引っ張ってくれて。
けたたましく鳴り響くアラーム音にすぐに児童館の職員が飛んできてくれた。
ドアが閉まる寸前、掴まれていない方の手で咄嗟にドアを押さえた。一太くん逃げるんだ‼男性職員が大声を上げ、一太の服を引っ張って助け出してくれた。
氏名、住所、緊急の連絡先。
全部登録してあるから、きっと大丈夫。今頃彼と一緒にいるはず。
一太が無事ならそれでいい。
「起きたか?」
がしゃがしゃと鍵を開ける音がして、レジ袋をぶら下げたお兄ちゃんが入ってきた。
「お腹すいただろう。未知が好きな甘いものも買ってきたぞ」
ドサッとラグマットの上にレジ袋を置くと、お兄ちゃんも腰を下ろした。
【手錠を外して‼】
両手を高く掲げて必死に訴えた。
「どうせまたパパから逃げて、あの男のところに行くんだろ?そんなの2度と許さない。未知はここでパパと一緒に暮らすんだ。何、心配ない。死ぬまでパパが未知の面倒をみてあげるから」
くくっと冷笑するお兄ちゃん。
体を起こして貰ったけれど、脅され鋭い眼光で睨み付けられた。
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