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神様ありがとう

彼はポロポロ涙をこぼしながら泣いていた。 「嬉し涙だ。未知ありがとうな。一太を授けてくれただけでも嬉しいのに・・・子供が好きで、結婚したら三人は欲しいって那奈と話しをしていたんだ。それなのに一人も授かることが出来なかった。世の中には自分の子を虐待し、平気で殺す親もいれば、俺らみたいに子供が欲しくても恵まれない夫婦もいるんだ。ほんと不公平だよな。でも、こうして子供を授かることが出来たんだ。神さまなんていない、そんなの信じなかった。でも、ちゃんと見ててくれたんだな。ありがとう、未知、ほんと・・・」 男泣きなんてみっともない、そうぶつぶつ言いながら、最後は涙に崩れた。 僕の手を両手で握り締め、声を上げて泣いていた。 「今からこれでは先々が思いやれますね」橘さんほとほと呆れていた。 「まま‼」それからしばらくして。頃合いを見計らい、一太の手を引いた茨木さんが姿を見せてくれた。 なんとお礼を言えばいいのか分からない。助けてもらって、ありがとうって、ちゃんと伝えられなかったんだもの。 「礼なんかいらないさ。当たり前のことをしただけだ」 一太は茨木さんのことをじいじって呼んでいた。今までおじちゃんだったのに。 「一太にとっては、ひいじいちゃんだ。おじちゃんは変だろ?」 言われてみてやっと実感が沸いてきた。お祖父ちゃんって僕も呼ばないと。でも少し気恥ずかしい。

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