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彼のお父さん

「挨拶済んだろ?帰るぞ」 そっぽを向いて、今来たばかりの道を戻り始める彼。 「なんだもう帰るのか?」 「悪かったな」 「帰るならお前だけ先に帰れ。未知さんと一太はあとで送っていくから」 「はぁ!?冗談だろ?」 「ワシが用あるのは、未知さんだ。お前には用などない。さっさと帰れ」 手でしっしと払われて。彼、しかめっ面になり父親を睨み付けた。 「いい面するようになったな遥琉」 全く動じることなく、ゲラゲラと豪快に笑い飛ばして、まぁ、好きにしろ。そう言って、家に案内してくれた。 玄関先で僕を待ち構えていたのは森さん・・・じゃなくて、心さん。目が合い、頭を下げて挨拶すると、仏頂面されぷいっとそっぽを向かれた。 まぁ、無理もないか。 彼との結婚に最後まで猛反対していたもの。 「心、兄嫁に挨拶くらいしろ」 彼のお父さんに言われて、嫌々ながらも、こんにちわって挨拶してくれた。 「そういう挨拶の仕方はないだろう心」 奥から一人の男性が姿を現した。すらっと長身で痩せ形で、彼と同い年くらいだろうか。ノンフレームの眼鏡を掛けていた。 「未知さんや、うちの婿や」 ってごく普通に紹介されて。 【婿・・・って?確か、三人兄弟じゃなかったっけ?】 ようやく状況をのみ込んだとき、びっくりしすぎて、ぽかんとしてしまった。 「昇龍会のお家騒動を収拾させるため、秦さんとこのボンにうちの心にもらったんや。まぁ、うちの跡取りは、一太がおるしな」

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