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最終章 その後
それから10ヶ月後ーー
今日は、待ちに待った彼との結婚式。
昨日までの荒天が嘘のような、雲一つない皐月晴れに恵まれた。
「未知さん、すごくお綺麗ですよ」
「私の自慢の弟だもの。当たり前よ」
橘さんに手伝ってもらい純白のタキシードに着替えをしていたら、那奈姉さんが様子を見にきた。
「可愛い」クーハンの中でバンバイの格好で眠る一月前に産まれたばかりの遥香にすぐに気が付き、にっこりと笑顔になった。
「産まれる直前まで男の子って言われてて、遥大っていう名前付けてたのにね」
「そうですね、産まれてみたら女の子で、遥琉が一番驚いてわたわたしてましたよ。名前を一から考え直してました」
無事ベビハルが産まれて。女の子にハルトと名付けるわけにもいかないから、彼の一字をもらい、゛遥香゛と命名した。一太が赤ちゃん返りしないか、遥香に焼きもち妬かないか心配だったけど。
「ママははるちゃんのおせわ。いちたはパパのおせわするからいいよ」って。甘えん坊だったのに、遥香が産まれて、パパみたいにカッコいいお兄ちゃんに目覚めたみたい。
「ママに似て美人さんになるよ、きっと」
「今からどこにも嫁にはやらないと」
「嫁にくれる気がないなら、龍一家の跡取りになればいいわ」
「那奈さん、それはちょっと・・・」
「冗談よ。遥琉、ヤクザ辞めたんだもね。でも、まさか、ほんとに辞めるとは思わなかったけど」
彼、僕と一太と遥香、4人でごく普通の家庭を築きたいと、カタギになる道を選んだ。
知り合いのつてを頼り、3か月前から企業内にある保育所で、念願だった保育士として働いている。ただ顔が怖いせいか、はじめて会う子はみんな必ず一回はギャん泣きするみたい。根はとっても優しいんだけどね。
「そうだ未知、姉さんね・・・」
自然と那奈姉さんと目が合った。溢れんばかりの笑顔を向けられて。なんとなく理解した。
【もしかして・・・赤ちゃん?】
「うん、出来たみたいなの」
昇龍会の幹部と交際してるって、彼言ってた。でも、交際相手には家庭があるって確か。
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