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その後
「一つ、他人を妬まず、二つ、母親を憎まず、三つ、養父母に感謝する心を常に持ち、四つ、己の境遇に悲観せず、五つ、いつか母親や弟と再会したときは分かり合う優しさと、赦す気持ちを持つーー茨木さんが、いつも私に言っていた言葉よ。だから、私は夫を・・・遥琉を取られても未知を許したの。あの日以来、男性が怖くて、受け入れられないトラウマをずっと抱えていた。だから彼との夫婦生活は殆どなかった。彼が無類の子供好きなのを知ってるからこそ辛かった。彼の愛人に子供が産まれれば、私と彼の子供として育てればいい。だから、愛人と付き合うのを黙認した。でも未知以外、誰一人彼の子供を妊娠しなかった。柚奈、さん・・・」
とげのある声で母さんじゃなく、名前で呼んで、きっと睨み付けた。
「申し訳ないという気持ちに嘘偽りがないなら、尊さんとちゃんと向き合う覚悟、あなたにはありますか?」
「那奈・・・」
ハッとし、息をのむお母さん。
「多感な時期に、大人の身勝手な理由で人生の全てを奪われたのよ。私には茨木さんや、父さん、兄さんがいてくれたから。支えてくれたから何とか生きてこられた。未知も一太がいたからこそ生きてこれた。尊さんはどう?たった一人知らない親戚の家に預けられて・・・二十才過ぎまで部屋に引きこもっていたそうね。逆恨みするのも当然でしょ?未知に固執するあまり、回りが見えなくなって、悪い人に簡単に騙されて使い捨ての駒にされて・・・手嶌組に消されるはずだった彼を助けたのは、遥琉の父親よ。可愛い嫁の兄には違いないから、そう言って」
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