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番外編 かけがえのない宝物

カランカラン、ドアベルが鳴って。 上は水色のスモック。下はグレーの半スボンを穿いた一太が勢いよく駆け込んできた。 「おう、一太」 重苦しい空気を一掃するかのような一太の笑顔に、秦さんや茨木さんの表情が自然と緩む。 「どこの幼稚園に通っているんだっけ?」 「ほしみやようちえん、ゆりぐみ。うづきいちた‼」 「おぉ、そうだった」 ピンと背筋を伸ばし大きい声でハキハキと答えた一太の頭を、秦さんが嬉しそうに目を細めて撫でてくれた。 「パパの小さいときにそっくりだ」 「あぁ、パパそっくりだ」 一番好きな言葉を二人のじいじに掛けてもらい、ますますニコニコになる一太。 世界一パパが好き‼ 大きくなったらパパみたくなる‼ 彼がパパと信じて疑わない一太に、いずれ本当のことを言わないといけないのだろうけれど。 「どうした、浮かない顔をして」 「そうですよ」 ため息を吐くと、一太のあとに続いてお店に入ってきた彼と、橘さんに苦笑いされた。 「パパ‼ままたん‼」 お客さんに笑顔を振り撒きながらおしぼりを配っていた遥香の手がぴたりと止まった。 遥香はもう一人の゛ママ゛である橘さんが大好きで、ままたんと呼んでる。 「ハルちゃん偉いな、ママのお手伝いですか?」 「うん‼」 最初ままたんと呼ばれることに恥ずかしがっていた橘さん。でも今は、ままたんと呼んでなついている遥香が可愛くて仕方がないみたい。

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