140 / 3636

番外編 かけがえのない宝物

「遥香、パパは?」 「はるちゃんは、ままと、ままたんがいいの」 彼がおいでって両手を広げてくれたけど、遥香がパタパタとスリッパの音を響かせ駆け込んでいったのは橘さんのほうだった。 「パパ離れするの早すぎないか?」 しょんぼりと肩を落とす彼。 「パパにはいちたがいるでしょ?」 「おぉ、そうだった。一太おいで」 彼が一太をよいしょと抱き上げてくれた。 「あのね、パパ」 「ん!?何だ?」 「あんまりしつこいと、ママとハルちゃんにきらわれるよ」 痛いところを突っ込まれたのにも関わらず彼きょとんとしていた。 「そうなのか」 「遥琉、あなたっていう人は・・・」 そんな彼に橘さんほとほと困った表情を浮かべ深いため息を吐いていた。 「いいなぁ、仲が良くて」 「あぁ」 彼、秦さんと茨木さんに声を掛けられて、何かを急に思い出したみたい。 一太を脇に抱っこしたまま秦さんの隣の椅子に腰を下ろした。 「襲名の案内状、未知に渡しておいたぞ」 「今はもうヤクザじゃない」 「卯月家の次男坊には変わらんだろ?中澤家と卯月家は縁戚同士。出てもらわないとこっちが困る。それが筋ってもんだろ」 秦さんがもう一口コーヒーを啜った。

ともだちにシェアしよう!