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番外編 逆恨み

程なくして橘さんと裕貴さんが帰ってきた。遥香の名前を何度も呼びながら彼と共に二人に駆け寄った。 「疲れて寝てしまいました」 橘さんの背中におんぶされ熟睡してる遥香の寝顔はとても穏やかだった。 「さすが遥琉の娘。1度も泣かなかった。騒がず大人しくしていたから、家政婦も遥香をすぐに殺さなかったらしい」 「そうか、良かった・・・無事で・・・」 男泣きなんてみっともないと言いながら泣き崩れる彼。大きな体が一回りも二回りも小さく見えた。そんな彼に寄り添いながら、目蓋から溢れでた大粒の涙を手で何度も拭った。 「まぁ~~ま」 頭の上から遥香の声が聞こえてきて、慌てて顔を上げた。 「遥香‼」彼もすぐに気が付いてすっと立ち上がり娘の顔を覗き込んだ。 「パパあのね、はるちゃんね、おなかすいた」 「そっか、お腹が空いたか。ママに美味しいおやつ作ってもらおうな」 眠り眼を擦りながら、何事もなかったかのようにあどけない笑顔で空腹を訴える娘に嬉し涙を流しながら何度も頷く彼。 「逆恨みしてもしゃぁないやろ。そう龍一家の組長に諭されたんだ」 心さんと一緒に姿を現した人物に言葉を失った。

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