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番外編 大切な家族と歩む未来

「未知が、゛お義姉さん゛で良かった」 ポツリと心さんが呟いた。 「だってそうでしょう。未知と出会わなかったら、一太や遥香に会えなかったもの。だからすごく感謝してる。僕もいつか未知や遥琉みたいな温かい家庭を裕貴と築きたいなって」 【心さんなら大丈夫】 「ありがとう未知」 両手を握られぶんぶんと大きく振られた。ごほん‼カーテンの向こう側からわざとらしい咳払いが二回聞こえてきた。 「お互い、焼きもち妬きの夫を持つと本当大変だよね」 クスクスと心さんが笑い出した。やっぱり彼には暗い顔は似合わない。いつも笑っていて欲しい。 「関係者以外立入禁止って書いてるだろう。俺たちは部外者だ。おい千里‼」 面会時間は夜八時までで、彼と橘さんが帰り支度をしていると、ガラっと扉が開いて、すらりと背の高い、腰まであるロングヘアーの女性がかっかっとハイヒールの音を響かせて入ってきた。彼と橘さんには目もくれず、寝ていた僕の枕元でピタリと立ち止まった。 「あなたが卯月未知?」 なぜか声は男性のものだった。 ちらっと伺うように、恐る恐る顔を見上げると目鼻立ちがはっきりした、小顔のすっごく綺麗な女性が立っていた。体のラインを強調するかのようにピッタリフィットした赤いワンピースは丈がとにかく短くてお尻が見えるんじゃないかってヒヤヒヤした。首にスカーフを巻いていたけれど、女性にはないはずの喉仏がついていた。しばらくの間、無言で見詰め合った。 「いゃ~~ん‼かわいい‼」 女性みたいな甲高い声が部屋中に響いた。 「千里、頼むから静かにしてくれ」 あとを追い掛けてきた笹原さんが冷や汗をかきながらあたふたしていた。 「相変わらず騒々しいですね」 「ごめん橘。千里が店に出る前にどうしても未知に会いたいって言い出して」 「お前も大変だな」 彼も橘さんも苦笑いしていた。 「未知、はじめまして~~゛せ・ん・り゛じゃなくて、゛ち・さ・と゛です~~よろしくね」 【あぁ、は、はい】 あまりの迫力にあんぐりと口を開け、目をパチクリしてしまった。 「驚かせてごめんな未知。妻の笹原千里だ。ダンサーをしている」 どうりでスタイルが抜群なんだ。 「ゲイストリップショーのって、ちゃんと言わないと駄目でしょう、ねぇ未知」 千里さんに急に話しを振られてどう返していいか分からなくて、彼に助けを求め視線を送った。

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