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番外編 大切な家族と歩む未来

二人きりになり、急にそわそわしはじめた。いつも一太や遥香が一緒でなかなか彼と二人きりになれないから。何となく恥ずかしくて、視線が宙をさ迷う。気まずい空気が流れ、堪らず布団の中に逃げ込むと、彼もスリッパを脱いで、そのままもぞもぞと布団の中に潜り込んできた。 「顔、茹でタコみたく真っ赤だぞ」 だって・・・顔を逸らした。 「まぁ、なかなか二人きりになれないからなぁ。寂しかった⁉」 うんと正直に頷いたら間違いなく暴走するだろうな。 それでもいいと思える自分を浅ましいと卑下しながらも、しなだれるように彼の胸に体を預けた。 「そっかぁ。ゴメンな、寂しい思いをさせて」 ううんと首を横に振ると、背中に逞しい腕が回ってきて、傷口を労るように静かにそっと広くて厚い胸に抱き寄せられた。 「千里のことだが・・・ーー」 彼がぽつりぽつりと話しはじめた。 橘さんとは九才年の離れた、父違いの実の弟で、経済的な理由から生後すぐに養護施設に預けられたみたい。 「橘は、母親から死産だったと聞かされて、それを鵜呑みにしていた。まさか、生きていたとはな。千里は、10歳の時ある事件を起こした。養護施設の男性理事長を刺したんだ」 彼の言葉に驚いて顔を上げた。 「理事長から性的な悪戯をずっと受けていて、我慢の限界だったんだろうな。自分を守るためやむを得ず・・・正当防衛なのに、世間はそう見なかった。誰も千里の話しを信じなかった。マスコミが大挙して橘の許に押し掛け、そこで初めて橘は千里が実の弟だと知った。橘は親父にどうしても弟を助けたいと頭を下げ、千里を施設から連れ出した。千里も未知と同じく性的虐待を受け、トラウマを克服するまでかなりの時間を要した」 悔しそうに唇を噛み締めて・・・怒りで震える腕で肩を強く抱き締められた。

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