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番外編 それでも彼が好きだから
「それと、お前さんと再婚してからは、浮気は一切はしていない。それは断言できる」
彼同様、勘の鋭いお義父さんにはすべてはお見通しだった。心に抱える疑念や、迷いを笑顔で看破された。
「あいつは、ワシと違う。そこまで馬鹿じゃない。遥香おいで、庭でも散歩してこよう」
オヤジ、もういい年なんですし、あまり無理されない方が・・・と側に控えていた舎弟が心配し声を掛けた。
「年寄り扱いするな」お義父さんはその舎弟をピシッと一喝すると、遥香をよいっしょと抱き上げてくれた。
「あっ、そうだ。笹原が広間で待っていたぞ。早く行ってやれ。一太も遥香もワシが責任を持ってみてるから安心しろ」
去り際に然り気無く言われ、お義父さんの何気ない気遣いと優しさに、涙が出るくらい嬉しくなった。
彼と結婚して、卯月家の嫁になって、本当に良かった。
広間の襖戸を少し開け、中の様子をそぉーと伺ってから入ろうとしていたら、背後から声を掛けられてびっくりして思わず尻餅をついた。
「悪いな、驚かすつもりはなかったんだ。未知、怪我の具合はどうだ⁉遥琉のことだ、無茶ばかりさせているんだろう」
笹原さんが前屈みになり、手首を引っ張って起こしてくれた。
「焼きもち妬きの亭主を持って大変だろう」
彼の問い掛けに首を横に振った。
「好きで一緒になったんだ。まぁ、しゃあないな。なぁ未知、少し付き合ってくれないか⁉」
笹原さんに言われ、迷った末頷いた。大丈夫、千里さんの旦那さまだもの。いくらなんでも、笹原さんにまで焼きもちを妬かないはず。
広間の前を素通りし、庭を見渡せる縁側に並んで腰を下ろした。
お義父さんや若い衆のみんなに遊んでもらい、キァーキァーとはしゃぐ遥香の声が雲一つない青空に響いていた。
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