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番外編 過去に囚われたままの彼

「福井さんもそうなの?そうは見えないけど」 「15年だ。福井はずっと那奈が好きだったんだ。想いが叶わなくてもいい、報われなくてもいい、それでも想い続けて……ようやく手にいれたんだ。15年ずっと好きだった那奈を……お腹の子にまで焼きもち妬いて大変みたいだぞ。笹原もとんだとばっちりを受けているみたいだ」 「え!?そうなの?」 「本人に聞いてみたらいい」 茨木さんと千里さんがそんな会話を交わしている一方で、心さんと裕貴さんは……というと、腕を絡ませ、手を恋人繋ぎにして、人目も憚らずイチャついていた。 「いいねぇ、心は」 そんな二人を呆れながら眺めていた千里さんがポツリと本音を漏らした。 「焼きもち妬きを直す手だてはないが、たまには笹原に甘えてみたらどうだ?」 「そう……だね」 恥ずかしいのか千里さんの顔が火照っているように見えた。 「千里、何を今さら恥ずかしがってるんだ。毎晩、笹原相手にストリップショーをしているくせに」 「ちょ、ちょっと裕貴!!」 千里さんが慌てて立ち上がった。 「お前らの方こそ、馬鹿がつくくらいラブラブで羨ましいよ」 しれっとして答える裕貴さん。おい、おいそういう喧嘩は他所でしてくれよ。茨木さん、二度三度ため息をついていた。 それから程なくして、秦さんが来店した。今日は珍しく同伴者がいた。ブランドものの黒いスーツを粋に着こなし、火のついていない煙草を口にくわえていた。かなり恰幅のいい壮年の男性だった。 「店内は全面禁煙だ。小さい子供もいるんだ場をわきまえろ」 「相変わらず手厳しいな播本は」 「今は茨木だ」 「おぅ、そうだった」 茨木さんの古い友人なのかな、そう思いながら、奥のテーブル席に案内した。小さい手におしぼりを二つ握り締め、遥香も笑顔でお手伝いをしてくれた。

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