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番外編 過去に囚われたままの彼

「え⁉カレン⁉」 すっと千里さんが立ち上がった。 「俺も一回しか彼女に会っていないから…… こ、心、勘違いするなよ。俺、ずっと女性が恋愛対象だったんだ。ゲイバーや、ゲイストリップショーには一回も行ってないからな」 珍しく裕貴さんが狼狽えて、懸命に心さんに弁解していた。 「あっ、そう。ごめんね、男で……胸もないし、未知みたく可愛くもないし……嫌だったらいいよ。いつでも別れてあげるから」 不貞腐れてぷいっとそっぽを向く心さん。 「それだけは勘弁してくれ。心に捨てられたら俺、一人では生きていけないから、頼むよ」 裕貴さん慌てて心さんのところに駆け寄っていった。 「まるでうちの息子たちと嫁を見てるようだ。夫婦喧嘩が出来るのは仲がいい証拠だ。幾らでもやったらいいんだ」 ゲラゲラと豪快に笑う縣さん。そういえば、僕といい、心さんたちといい、同性同士の夫婦。普通ならあり得ないに。驚くのが当たり前なのに、どうしてこんなにも自然に接してくれるんだろう。 「本当にカレンだ。隣にいるのは未知の知り合い?」 何してんだが、そこのバカップルは……呆れながらも写真を眺めていた千里さん。女性が間違いなくカレンさんだと確認すると、秦さんにそんな質問を投げ掛けた。 「えっと……」 言いにくそうに口にすると、チラッと視線を送られた。 千里さんに隠し事はしたくないもの。正直に話して大丈夫です。大きく頷いた。

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