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番外編 過去に囚われたままの彼
「名前は尊。戸籍上は兄だが、未知にとっては実の父親であり、一太の実の父親でもある。ちょっとややこしくて分かりにくいが」
「そんな……」
千里さんが驚くのも無理ない。
「一太の父親は遥琉だ。それでいいじゃないか。血の繋がりがあるか、ないかなんて関係ないよ、そうだろう千里」
縣さんが頃合いを見計らって彼女に声を掛けてくれた。
「ワシの次男夫婦が東北地方のある地方都市に住んでいるんだ。子供らを連れ、しばらくそこで身を隠したらどうかと思ってな。そこを縄張りにしている菱沼組の組長の度会とワシは五分の兄弟分にあたる、どうだ未知」
「実はな、那奈たちも避難させようかと思っているんだ。もし万が一、抗争に発展したら、間違いなく命を狙われるだろうから」
切羽詰まった状況だから、一刻の猶予もないからと、すぐに決断を迫られた。
やっと彼と子供たちと元通りの穏やかな生活に戻ったというのに。
改心して一からやり直すって、もう二度と過ちは犯さないって、彼や両親の前で誓ったよね。それなのに何で……お兄ちゃん。
「心、お前も未知たちと一緒に行け」
「はぁ、何で?」
「二人の後ろに腕だけ写っている男、ソイツが少々厄介な奴なんだ」
千里さんと一緒に写真に目を凝らした。肩口から腕にかけて幾つものどくろの刺青を施し、手首には何百万もするブランドの時計を嵌めていた。
「通行人がたまたま写っただけじゃないの⁉」
「いや、違う。ソイツは手嶌組の組長のお気に入りだった男だ」
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