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番外編 新しい生活がはじまり、ママ友と出会い、そして…
「少しいいかな」
入れ違いに心さんの声が聞こえてきて。子供たちを起こさないようにそぉーと足音を忍ばせて部屋に入ってきた。
「未知の両親も那奈も。それに、秦さんも、笹原さんも、千里も。みんな無事だよ。だから心配しないで。未知は一太やハルちゃん、それにお腹の子のことだけ考えればいいんだよ」
携帯を握り締めたまま震えていた僕を何とか落ち着かせようと、わざと明るく振る舞い、元気付けてくれた。
心さんだって、離れて暮らす裕貴さんのことが心配でならないはずなのに。
『裕貴さんは⁉大丈夫なの⁉』メモ帳に走り書きをした。
「ん⁉裕貴・・・⁉彼は大丈夫。だって、龍一家の次期組長だよ。五月蝿いのがいなくて、今頃、清々して羽を伸ばしているよ、きっと」
心さんは心配するどころか、あっけらかんとしていた。
「チャラチャラしてても、ヤクザを生業(なりわい)とする卯月家の四男坊だよ。裕貴だってヤクザの息子。お互いそれを分かった上で一緒になったんだもの。覚悟は出来てる」
並々ならぬ決意を秘め、落ち着いた声で話す心さん。
「今回の件は未知のせいでも、誰のせいでもないからね。二十年近く燻っていた、昇龍会や執行部に対する下部組織の不平不満が爆発し、表沙汰になっただけで、未知のお兄さんはいいように利用されているだけだ。裕貴がそう言ってた」
心さんがポケットから何かを取り出すと、手にそっと握らせてくれた。そんなに大きくない。四角い形で小さな鈴が付いてる。これってもしかして・・・…
「安産祈願のお守り。父がね、橘に渡すように頼んだみたい。何だかんだいいながら、孫が増えるって一番喜んでいるの父らしいよ。口止めされてても言いたくてしょうがないみたい」
お義父さん有難う……心の中で感謝の気持ちを繰り返し述べた。
遥琉さん、僕だって卯月家の嫁だもの。覚悟を決める。
例えお兄ちゃんと刺し違えることになっても、子供たちは絶対守り抜いてみせるから……だから、見守ってて。
一太や遥香のあどけない寝顔を眺めつつ、お腹をゆっくりと擦った。
三人目のベビハルちゃん。
お兄ちゃんに立ち向かう勇気を与えてくれてありがとう。ママ、もう後ろを振り向かず、前だけ見て頑張るから。
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