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番外編 僕達家族を守るために彼が決意したこと
「よそ者が跡目を継ぐなんて聞いたことないよ」
「心、うちの組は兄貴におっきい借りがあるんだ」
弓削さんがふらっと立ち上がり、千鳥足で台所に向かった。
「あんまり飲みすぎるなよ」心配した柚原さんが声を掛けると「おぅ」右手が上がった。
「大きい借りって……?」
「5年前だ。先代が放蕩の限りを尽くしたお陰で、台所が火の車だった組を再生するため、先代の弟の度会が新しく組長に就いた。このビルは昔から幽霊が出る噂があって、競売にかけられても買い手が付かなくて放置されていたんだが、それを遥琉の会社が買い取って、度会に安く貸して、事業をはじめさせた。遥琉も、信孝も素人同然の俺たちに経営のノウハウを一から教えてくれた。今の菱沼組があるのは、遥琉と信孝のお陰だと言っても過言ではない。だから、今回全面的に協力することにしたんだ、この茶番に」
「茶番……って……!?」
首を傾げる心さん。
「あのな、心、兄貴が組長に就けば、未知は姐さんになる訳だ。そうなると大上組は手も足も出なくなる。もし未知に危害を加えたら、菱沼組まで敵に回すことになるだろ?だから……」
缶ビールを片手にふらつきながら戻ってくる弓削さん。柚原さんの隣に座るのかと思ったら、僕と心さんの間に強引に割り込んできた。
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