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番外編 橘さんの結婚

一太と遥香は、二人の会話をあんぐりと口を開けて見ていた。 「二人とも場所をわきまえろ。子供の前でする話しじゃないだろ?」 さすがの橘さんも呆れ果てていた。 同じ養護施設で育った、いわば戦友なの。柚原(カレ)がいなかったら、アタシ生きてこれなかった。 そんなことをそっと彼女が教えてくれた。 ゲイストリップショーの地方公演の為に立ち寄ったと千里さん。 子供たちにお土産をたくさん持ってきてくれた。 「ねぇ、裕貴に会えなくて寂しくないの?」 スーツケースをリビングに運び込み、荷物を片付けながら、千里さんが心さんにそんなことを聞いた。 「いつもベタベタとひっついて離れないし、暑苦しいし。すぐ焼きもち妬いてぶすっとするし……いなくて清々してる」 「無理しちゃって、本当は会いたいんじゃないの⁉」 わざと強がる素振りを見せて、ぶんぶんと首を横に振る心さん。 「悪かったな、暑苦しくて、焼きもち妬きの亭主で。そりゃあ、会いたくないよな」 すっーと音もなくドアが開いて、裕貴さんが現れたから、腰を抜かすほど驚いた。 「えっ………嘘………何で?」 「夫が、妻に会いにくるのに理由が必要か?」 信じられないといった表情で呆然とし、口を両手で覆う心さん。 「だって会合は⁉」 「会合よりお前の方が大事に決まってるだろう。良かった無事で」 裕貴さんが心さんのもとに駆け寄り、その小さな肩をそっと抱き締めた。

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